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会員登録通知やメールマガジンなど、ビジネスにおいてメール配信は必要不可欠です。そのため「メールが顧客に届かない」「大量配信すると遅延する」といった課題は、機会損失やクレームの原因となり、最終的には顧客からの信頼を失いかねません。そこで、安定的なメール配信を実現し、それらの課題を解決するのが「MTAサービス」です。
本記事では、MTAサービスの基本的な仕組みやメリット、自社の要件に最適なサービスを選ぶためのチェックポイントを解説します。
目次
MTAサービスとは?
MTAサービスとは、「Mail Transfer Agent(メール転送エージェント)」をクラウドサービスとして提供するものです。
MTAとは、メールの送信処理や再送制御、エラーハンドリングなどを行う、メールサーバーの中核的な役割を果たすソフトウェアです。PostfixやSendmail、qmailなどが代表的なものとして挙げられます。従来は自社サーバー上にMTAをインストールし、構築・運用を行うことが一般的でしたが、今日ではMTAのクラウドサービスの需要が高まっています。

MTAのクラウドサービスが求められる背景としては、以下のようなものがあります。
- 到達率・安定性の維持が難しい:ISPやメールサービスプロバイダごとの制限や送信要件が高度化しており、専門的な知識が必要。
- 運用コスト・リソースの増大:監視・チューニング・障害対応など、サーバー運用に関わる人的リソースが必要。
- スケーラビリティ確保:キャンペーンや通知配信などで一時的に配信量が増える場合、自社構築では柔軟に対応しづらい。
こうした背景から、MTAの利用形態は「自社構築」から「クラウドサービス利用」へ変化しつつあるのです。
MTAのさらに詳しい機能や仕組みについては、以下の記事で解説しています。
MTAとは? メール転送エージェントの概要と機能、代表的な製品について解説|ベアメールブログ
MTAサービスのメリット
MTAをサービスとして利用する理由を説明してきましたが、実際利用するとどのようなメリットがあるのでしょうか? ここでは、主な5つのメリットを解説します。
到達率の向上
MTAサービスを利用することで、高い到達率で安定したメール配信を実現できます。MTAサービスは信頼性(レピュテーション)の高いIPアドレスに加え、主要なISPや携帯キャリア向けにチューニングされた配信アルゴリズムを備えています。これにより、迷惑メール判定されるリスクを低減し、高いメール到達率を実現します。
運用負荷の軽減
MTAサービスを利用することで、メールサーバーの構築や監視運用、IPレピュテーションの管理などの手間を大幅に減らせます。また、メールサービスプロバイダや携帯キャリアの仕様変更への対応についても、MTAサービス側でカバーされることが多いため、対応負荷が軽減されます。限られたリソースでも安定したメール配信を維持できる点が大きなメリットです。
大量送信の実現
自社のサーバーから一度に大量のメールを送信しようとすると、サーバーへの負荷やIPアドレスの制限により、配信遅延や配信エラーが発生しやすくなります。MTAサービスは、大量配信に最適化されたインフラを備えており、数万、数百万通のメールであっても、高速かつ安定して処理することが可能です。これにより、大規模なメールマガジン配信やプロモーションにも安心して利用できます。
配信結果やログを容易に確認可能
自社メールサーバーでは、配信ログを確認するのが困難な場合があります。MTAサービスでは、配信結果や配信ログを管理画面から誰でも簡単に見ることができます。
万が一、顧客から「メールが届かない」と問い合わせがきても、エラーの有無やその原因についてすぐに確認できるため、迅速な対応が可能になります。
様々な環境から利用可能
MTAサービスは、SMTPリレーやAPI連携といった標準的な接続方法に対応しているため、既存のアプリケーションやシステムに大きな変更を加えることなく導入できます。また、特定のプログラミング言語やフレームワークに依存せず、多様な開発環境から利用できる柔軟性の高さも大きなメリットです。
MTAサービスの利用シーン
MTAサービスは、その安定性と信頼性から、さまざまなシーンで利用されています。ここでは代表的な利用シーンを3つ紹介し、それぞれにおけるMTAサービスの役割を解説します。
トランザクションメール
Webサービスや業務システムにおいて、特定のトリガーを起点として自動送信されるメールをトランザクションメールと呼びます。例えば、「会員登録完了」「パスワードの再設定」「商品の購入確認」といったメールがこれにあたります。ユーザ体験を支えるこれらの通知は、確実に届くことが求められます。
そのために有効なのが、MTAサービスの活用です。MTAサービスを利用することで、これらの重要な通知を迅速かつ確実にユーザの手元へ届けることが可能になります。
トランザクションメールについて詳しく知りたい方は、次の記事をご参考ください。
トランザクションメールとは?システムから自動送信されるメールの重要性について解説 | ベアメールブログ
大量一斉配信
マーケティング活動において、メールマガジンやキャンペーン告知といった大量一斉配信は重要な手法です。しかし、自社サーバーから配信する場合、配信性能の限界やIPレピュテーションの低下といった問題に直面しがちです。
MTAサービスは大量配信に特化しているため、プロバイダからのブロックを回避し、高速にメールを届けることができます。
SMTPサーバとしての利用
アプリケーションや各種システムからメールを送信する際には、通常SMTPサーバーが必要です。従来は自社でメールサーバーを構築・運用するのが一般的でしたが、これには専門知識を持つエンジニアによる継続的なメンテナンスが不可欠でした。
そこで、SMTPサーバーの代わりにMTAサービスを利用することで、サーバーの構築、運用、セキュリティ対策といった煩雑な業務から解放されます。結果、インフラ担当者の負荷を大幅に軽減することができます。
SMTPサーバーについての詳細は以下のブログを参考にしてください。
SMTPサーバーとは? メール送受信の仕組みとサーバーの種類、SMTPサーバーのセットアップ方法 | ベアメールブログ
MTAサービス選定時の7つのチェックポイント
自社の要件や目的に合ったMTAサービスを選ぶには、いくつかの比較・検討軸を整理しておくと判断しやすくなります。
ここでは、多くの企業が検討時に重視する代表的な7つのポイントを紹介します。これらを参考に、自社の規模・技術要件・運用体制と照らし合わせながら評価してみてください。
1.送信方式(SMTPリレー/API連携)の柔軟性
MTAサービスがどのような送信方式を提供しているかは、運用のしやすさに直結します。主な通信方法は「SMTPリレー」と「API連携」の2種類。SMTPリレーは既存のメール送信プログラムを活かしやすく、導入の手間を抑えられます。一方でAPI連携は、より柔軟な制御やリアルタイムな送信状況の取得に適しています。
自社の開発体制や配信要件に合った方式を提供しているかを確認しましょう。
2.ログの確認・分析のしやすさ
不達や配信失敗の原因を迅速に把握できるかどうかは、運用効率を大きく左右します。
管理画面でリアルタイムにエラーログを確認できるか、エラー種別や宛先・時刻といった情報がどの程度詳細に記録されるかを確認しましょう。また、必要に応じてAPIやWebhookで自社システムと連携できるかも確認しましょう。
3.IPアドレスの共有/専有プラン
IPアドレスの運用形態によって、配信品質やレピュテーション管理の自由度が変わります。
共用IPを利用する場合は、コストが抑えられ、自社でのIPレピュテーション管理が不要となるメリットがありますが、他社の配信影響を受けやすいという側面があります。
一方、専用IPを利用する場合は、一般的にコストが高くなり、IPレピュテーションも自社で管理する必要がありますが、他社の影響を受けず安定した運用が叶います。
自社の送信規模と運用ポリシーに合わせて選びましょう。
4. SPF・DKIM・DMARCへの対応状況
MTAサービスが主要な送信ドメイン認証技術にどこまで対応しているかは、信頼性の確保に直結します。
SPF・DKIM・DMARCに対応しているか、また設定画面やマニュアルが整備されているかを確認しましょう。これらの認証を設定し運用できる環境があるかが、到達率改善に大きく影響します。
5.サポート体制と品質
メール配信では、突然のエラー率上昇など、予期せぬトラブルが発生することも少なくありません。こうした場面で迅速に対応してもらえるかどうかは、サービスの品質を左右する重要なポイントです。導入前に、以下の点を確認しておくと安心です。
- サポートの対応時間帯(平日のみか、24時間365日か)
- 問い合わせチャネル(メール・電話・チャット)
- 対応言語(日本語対応の有無)
また、無料トライアルがあるサービスであれば、実際にどの程度のサポートを受けられるのか体験でき、運用イメージを具体的に持つことができます。
6.通信・認証・運用面のセキュリティ対策
メールには顧客データや機密情報が含まれることも多いため、セキュリティ対策は欠かせません。
通信経路の暗号化(TLS対応)、アクセス制御(IP制限・二要素認証)、第三者認証(ISO27001など)の取得状況を確認しましょう。これらの要素が揃っていれば、安心して業務に組み込むことができます。
7.料金体系とトータルコスト
費用は月額や従量課金だけでなく、初期費用・オプション費・サポート費なども含めて総合的に判断しましょう。
自社の月間送信通数や事業の今後の成長を見越した上で、複数サービスのプランから適切なものを検討しましょう。
代表的なMTAサービス
国内外で数多くのMTAサービスが提供されています。ここでは、特に評価が高く、多くの企業で導入されている代表的な6つのサービスを紹介します。それぞれの特長を比較し、自社に最適なサービスを見つけるための参考にしてください。
サービス名 主な特長 日本語サポート 専用IP対応 おすすめ企業規模 Amazon SES 圧倒的低コスト・AWS連携 △ ○ 中〜大規模開発者向け SendGrid 豊富なAPIと高い到達率 ○(代理店経由) ○ 中〜大規模 blastengine 国内配信に最適化・手厚いサポート ◎ ○ 中小〜大規模 Customers Mail Cloud 金融・官公庁実績多数 ◎ ○ 大規模・官公庁 Cuenote SR-S 高速配信・DR対策 ◎ ○ 中〜大規模 ベアメール 国内運用・安定稼働・DMARC/BIMI対応 ◎ ○ 中小〜大規模・安定重視企業
Amazon SES (Simple Email Service)
Amazon Web Services (AWS) が提供するMTAサービスです。最大の魅力は、1通あたりの単価が非常に安価な点にあります。AWSの他のサービスとの連携が容易で、スケーラビリティにも優れています。ただし、サポートは基本的に開発者自身でドキュメントを読み解くことが前提となるため、ある程度の技術的な知識が求められます。
Amazon SES:https://aws.amazon.com/jp/ses/
SendGrid
世界中で高いシェアを誇るMTAサービスの代表格です。メールの到達率を高めるためのノウハウが豊富で、詳細な分析機能やA/Bテスト機能など、メルマガ配信サービスの機能も備わっています。APIのドキュメントが整備されており、開発者からの評価も高いサービスです。
SendGrid:https://sendgrid.kke.co.jp/
blastengine
国内で開発・提供されているサービスで、日本の携帯キャリアやISPに最適化された配信ロジックにより、国内への高い到達率を実現しています。日本語による手厚いサポートが受けられる点も大きな魅力で、技術的な相談にも対応してもらえます。シンプルな料金体系で、コストパフォーマンスにも優れています。
blastengine:https://blastengine.jp/
Customers Mail Cloud
メール配信事業において20年以上の実績(2016年より現サービス提供)があり、特に官公庁や金融機関といった高い信頼性が求められる分野での導入実績が豊富です。セキュリティやコンプライアンスを重視した機能が充実しているので、信頼性と実績を最優先する企業に適しています。
Customers Mail Cloud:https://smtps.jp/
Cuenote SR-S
月間81億通の配信実績を誇る国内のMTAサービスです。独自開発の高速配信エンジンにより、毎時340万通の高配信性能を実現しています。災害時にもサービスを継続できるDR(ディザスタリカバリ)対策が施されている点も特徴で、事業継続性の観点からも安心して利用できます。
Cuenote SR-S:https://www.cuenote.jp/sr-s/
ベアメール
ベアメールは「メールを確実に届ける」ことを支援するサービスです。到達率改善のためのサポートに強みを持ち、設定につまずいたときや想定外のエラーが発生した際にも、すぐに相談できる体制が整っています。また、専門のエンジニアが24時間365日体制でサーバーを監視・運用しており、高い稼働率を維持しています。

ベアメール:https://baremail.jp/mailrelay/top/
まとめ
MTAサービスは、メール配信の遅延や不達といった課題を解決し、安定したビジネスコミュニケーションを実現するための強力なソリューションです。
本記事で解説した選定ポイントを参考に、自社の目的や規模に合ったサービスを選ぶことで、開発者やインフラ担当者の運用負荷を軽減し、メールを確実に届ける環境を手に入れることができます。信頼性の高いメール配信環境を構築し、安心してサービス運用に集中できる体制を実現しましょう。
「ベアメール」は、高いIPレピュテーションの環境からメールを高速配信できる「メールリレーサービス」と、メールが届かない原因を分析して改善策を提示する「迷惑メールスコアリングサービス」を提供しています。
メール配信に課題をお持ちの方は、ぜひベアメールへお気軽にご相談ください。
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