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IPアドレスはメール送信にどう関係するのか? 共用IP・専用IPの違いも解説

IPaddoress

Eメールは、多数の顧客へ効率よくアプローチできるため、さまざまなビジネスに活用されています。しかし、近年はスパムメールや迷惑メールなどを抑制する仕組みの影響から、本来届くべきメールの到達率が低下することも珍しくありません。そこで注目すべきが「IPアドレス」です。メール到達率を維持・改善するには、メール送信時に使われる「IPアドレス」の信頼性を高めておきたいところです。ここでは、IPアドレスの基礎知識やメール送信時での使われ方に加え、専用・共有IPアドレスの特徴について解説します。

IPアドレスとは?

IPアドレスの概要

IPアドレスは「Internet Protocol Address」のことであり、いわば「ネットワークに接続された機器が持つアドレス(住所)」です。具体的には、TCP/IPネットワーク(※1)上で相手方(ホスト)を識別するための番号(識別子)のことを指しています。これまで一般的に使用されてきたIPv4アドレスは32ビット幅を4つに区切り、8ビットごとに数字で表現されています。

IPv4アドレス例:192.168.10.1

しかし、インターネットが爆発的に普及し始めた90年代終盤以降、IPv4アドレスの枯渇(絶対数は43億個)が問題視されはじめました。2011年にはグローバルIPアドレスの在庫がなくなったために、IPv6アドレスの本格的な普及が始まっています。IPv6は128ビット幅であり、理論上の絶対数は2の128乗個です。IPv4アドレスの絶対数を大幅に上回ることから、人口やネットワークに接続するデバイスの個数にも十分に対応できることが強みです。現在はIPv4アドレスとIPv6アドレスが共存している時期であるものの、すでに運用されているIPアドレスはIPv4が多いこと、IPv6に対応していないサービスやデバイスも多いため、IPv4がまだまだ一般的です。そのため、まずはIPv4アドレスについて具体的に解説していきます。

※1:TCP/IPネットワーク(Transmission Control Protocol/Internet Protocol):現在のインターネット通信およびイントラネット通信において最も利用されている通信プロトコル。

IPアドレス(IPv4)の構造

IPアドレスは「ネットワーク部」「ホスト部」という2つの部分で構成されています。

ネットワーク部は、国・地域・ISPなどによって利用可能な数値が決まっています。一方、ホスト部は「ネットワーク部の中でどこにいるか」を表しており、通信を行う機器の具体的な場所を指しています。

以前はネットワークの規模によりA〜Eまでクラス分けをし、クラスごとにネットワークアドレス範囲とホスト数を定めていた「クラスフル」方式が主流でした。ですが、クラスフル方式では無駄になってしまうアドレスが多数発生してしまうという課題があったため、現在ではサブネットマスクを使用する「クラスレス」方式が主流となっています。

クラスレス方式はクラスを使わず、任意のブロック単位で区切ることができるため、IPアドレスを効率的に利用することができます。サブネットマスクとはネットワークの範囲を指定するための仕組みのことで、IPアドレスの後ろに「/数値」と表記し、ネットワーク部のビット数を指定します。例えばネットワーク部が24ビット、ホスト部が8ビットであれば、IPアドレスの後ろに「/24」と表記します。サブネットマスクを用いたIPアドレスの表し方をCIDR(Classless Inter-Domain Routing)表記と言います。

ドメインとの関係性

IPアドレスとよく混同されがちな言葉に「ドメイン」があります。ドメインは、こちらも「インターネット上の住所」とよく言われますが、人間にとって「192.168.10.5」というIPアドレスによる数字の羅列よりも、「ABC.com」のような文字列のほうが可読性や認知性が高まるため、広く使用されています。

ドメインとIPアドレスをDNS(Domain Name System)によって紐づけることで、ドメインを入力すればそれと紐づけられたIPアドレスのサーバーへアクセスすることができるようになります。ドメインからIPアドレスを調べることを、「名前解決」と呼びます。

IPアドレスの種類

IPアドレスは、使われる場所や性質によっていくつかの種類に分けられます。主な分類方法は以下のとおりです。

使う場所による分類

グローバルIPアドレス

ネットワーク機器やサーバーなど、インターネットに接続するすべての機器に割り当てられるIPアドレスで、世界中で約43億個が使用されています。これらは全てユニークな番号であり、重複していません。グローバルIPアドレスがないとインターネットには接続できないため、基本的にISP契約時に割り当てられます。電話で言う外線番号のようなものと理解しておくと良いでしょう。

ローカルIPアドレス(プライベートIPアドレス)

インターネットに接続しないローカルなネットワーク(家庭内LANや企業内LANなど)で使用されるIPアドレスです。こちらも電話に例えると、内線番号のようなものだといえます。繰り返しになりますが、ローカルなネットワーク内専用に割り振られたIPアドレスのため、直にインターネット接続することはできません。もし接続が必要な場合には、ローカルIPアドレスをグローバルIPアドレスへ変換するインターネット接続用のルータなどの中継機器を介して行います。

性質による分類

固定IPアドレス

固定IPアドレスは、切断や再接続などを繰り返しても変動しないIPアドレスのことです。例えば、Webサイトを公開し外部からのアクセスがある場合、都度WebサーバのIPアドレスが変わってしまうようでは閲覧ができません。DNSでドメインに紐づけて公開するためには固定IPアドレスであることが必須となります。

動的IPアドレス

一方、動的IPアドレスは、切断や接続を繰り返すことで変動します。IPアドレスが変動するといっても、Webサイトを閲覧したり、メールを送受信したりといった私的な利用であれば動的IPアドレスでも何ら問題ありません。IPv4アドレスの枯渇に伴い、限りあるIPアドレスを有効活用するためにも、多くのISPが個人向けインターネットサービスの提供時に利用しています。

割り振り方による違い

専用IPアドレス

特定の使用者(ドメイン)専用のIPアドレスです。電話回線で言うところの専用線をイメージするとわかりやすいかもしれません。

共有IPアドレス

複数の使用者(ドメイン)で共有されているIPアドレスです。レンタルサーバーを利用している場合や、メール配信サービスなどを利用している場合に該当します。大半のケースでは共用IPアドレスで何ら問題ありません。しかし、メール到達率を改善するという目的であれば、専用IPアドレスによる運用が望ましいケースもあります。これについては、後ほど詳しく説明します。

メール送信時におけるIPアドレスの使われ方

次に、メール送信におけるIPアドレスの使われ方について解説します。まずは、一般的なメール送信の仕組みを見ていきましょう。

メール送信の仕組み

メールはローカルで送信処理が行われると、次のような経路で相手方へ到達します。

  1. メール送信 ⇒ 送信元メールサーバ
  2. 送信元メールサーバ ⇒ 宛先(受信側)DNSサーバ(ドメインとIPアドレスの紐づけを確認し、照合)
  3. 送信元メールサーバ ⇒ 受信側メールサーバ
  4. 受信側メールサーバ ⇒ メール受信

以上の流れの中で、特に注目すべきは2番目です。IPアドレスは、なりすまし防止の技術である「ドメイン認証(SPF・Sender IDなど)」の認証情報として扱われます。ドメイン認証はIPアドレスの信頼性を高める技術であり、メール受信の判断に大きな影響を与えます。

メールの到達率は、送信元IPアドレスの信頼性(=IPレピュテーション)に大きく左右されるため、送信元のIPアドレスは常に高いレピュテーションを維持しておかなくてはなりません。

IPレピュテーションとは

IPレピュテーションは、インターネット上におけるIPアドレスの信頼性をスコア化した指標です。前述したドメイン認証技術の利用・適切なコンテンツの配信・エラーとなった送信先メールアドレスのクリーニングなどを行った上で、徐々にメールの送信数を増やし、適切なメール送信の実績を積むことで高められます。

「IPレピュテーション」について詳しく知りたい方は、こちらの記事もぜひご一読ください。

IPレピュテーションの基礎知識、メール到達率との関係を解説|ベアメールブログ

メール送信には専用IPアドレス・共有IPアドレスのどちらが有利?

ここまでの内容を踏まえ、メール送信においてIPアドレスは専用・共有のどちらが良いのかを比較していきます 。

専用IPアドレス

メリット

  • 自らIPレピュテーションのコントロールができ、他者の影響を一切受けない
  • IPレピュテーションが高ければ、大量送信をしても問題なく、制限がない

デメリット

  • IPレピュテーションを高めるのに手間と時間がかかる
  • IPレピュテーションの維持管理にコストがかかる
  • IPレピュテーションが低いと、大量送信時にブラックリストに載ったり、キャリアやISPから送信制限・ブロックされる可能性が高い

共有IPアドレス

メリット

  • 同じIPアドレスの使用者が堅実なメール運用をしていれば、健全かつ豊富な送信実績からIPレピュテーションが高まっており、最初から到達率が高い状態でメール運用を開始できる
  • 専用IPアドレスに比べて、開始・運用のコストが小さい

デメリット

  • 共有する他者次第では、IPレピュテーションが低下するリスクがある
  • サービスによっては、共有IPアドレスを使用する環境では時間あたりの送信数制限などが設けられている場合がある

専用IPアドレスのメリットは、IPレピュテーションを完全に自分でコントロールでき、他者の影響を一切受けないという点です。他者の影響を受けないため、IPレピュテーションを高める施策を続ければ、継続的に到達率を維持・改善しやすいという強みもあります。一方で、そのための維持管理の手間や、IPレピュテーションが高まるまでの時間がネックになりがちです。

これに対し共有IPアドレスは、良質なサービスであれば時間や手間を削減しつつ高いメール到達率が実現できます。しかし、他の使用者が適切な運用をしていないことが原因でレピュテーションが低下し、メール到達率が下がってしまうリスクもあります。また、サービスによっては時間当たりの送信数の制限が設けられている場合もあるため、大量のメールを送信する場合はマーケティング施策のボトルネックにもなり得ます。

運用が楽なのは共用IP、大量送信なら専用IP

IPレピュテーションの管理の手間が少なく、すぐ利用できるのは共用IPアドレスですが、サービスによっては共有環境の安定性を保つために一斉送信の数に制限が設けられている場合があります。他者からの影響を絶対に受けたくないという場合や、サービスの制限を超えるような大量のメールを一括送信する場合には、専用IPアドレスの利用が望ましいといえます。

まとめ

本稿では、IPアドレスの概要や種類に加え、メール送信時の使われ方などについて解説してきました。IPレピュテーションは、メールの到達率に直結する要素です。したがって、継続的かつ適切な維持・改善活動が欠かせません。「メール到達率を高めたいが、IPレピュテーションの管理コストが気になる」という場合は、IPレピュテーション管理を代行してくれるメールリレーサービスなどの活用も検討してみてください。