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2020.11.04 (水)
メールが届かないメールが届かない!「IPスロットリング」の原因・回避方法とは?
Last Updated on 2023.06.2
ISPなどが備えているスパムメール対策の一種である「IPスロットリング」は、発生すると該当のIPアドレスから送ったメールが相手方に届かなくなり、メールの到達率が著しく低下します。一般的にIPスロットリングが発生する条件や、事後的な解除方法は公開されていませんが、いくつかの対策を施すことで事前に回避することが可能です。顧客とのコミュニケーションやマーケティング活動を円滑に進めるためにも、IPスロットリングの特性を理解し、適切な回避策を講じていきましょう。ここでは、IPスロットリングの原因や回避方法について解説します。
IPスロットリングが発生してしまいお困りの方、メールの大量送信にまつわるお悩みをお持ちの方にはこちらの資料がおすすめです。
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目次
IPスロットリングとは何か?
冒頭でも紹介したように、IPスロットリングとは、ISPなどによるスパムメール対策のひとつで、「スロットリング」や「メールスロットリング」と呼ばれることもあります。各ISPでは、一定時間内に受信可能なメールの数に制限を設けており、この制限を上回る量のメールが受信された段階で、受信制限が発生します。これがIPスロットリングです。また、IPスロットリングが発生している環境では、特定のIPアドレスやMTAからのメールは一時的にすべて受信を拒否されるため、メール到達率が著しく低下します。
一般的には時間の経過とともに解除されるようですが、一斉送信によるキャンペーンメールが届かなかったり、重要な業務連絡が漏れてしまったりというデメリットもあるため、可能な限り回避したいところです。
IPスロットリングの原因・挙動
では、IPスロットリングが発生する原因や発生後の挙動などを解説します。
原因
前述したように、IPスロットリングは受信数の制限を超過することで発生するケースが多いです。ただし、これ以外にも考えられる原因があるため、状況に応じた対策が必要になるでしょう。
●一定時間内に受信側の内部基準を超える量のメールを送信した
大量のメールを一斉送信し、受信するISPなどの内部基準を超えてしまうと、自動的にIPスロットリングが発生します。内部基準が公開されているか否かは、ISPによってまちまちです。
例えばGmailでは、次のようにメール受信数の条件を公開しています。
・ 1分あたり…60通
・ 1時間あたり…3600通
・ 1日あたり…86400通
●送信元IPアドレスのレピュテーションが低い
IPレピュテーションの低さがIPスロットリングの原因になることもあります。
受信者側が、過去にメール配信の登録解除や迷惑メール設定、特定のメールに対する苦情といった否定的なアクションを起こしている場合や、スパムトラップ (※)に対して何度もメールを送信することは、スパムメール配信者として判断される原因となりIPレピュテーションを低下させます。その結果、IPスロットリングの対象になったり、送信元IPアドレスがブラックリストに追加されたりしてしまいます。
IPレピュテーションは日々のIPアドレス運用次第で上下するため、定期的に「IPウォームアップ」を行ってレピュテーションを高める施策が必要かもしれません。これについては、後ほど詳しく解説します。
※スパムトラップ:
ISPやブラックリストサービス運営団体による「迷惑メール判定用のメールアドレス」です。
●受信ボックスの容量不足
ISPは、1アカウントあたりのメール受信容量に制限を設けています。この制限を超過(もしくは閾値に到達している)場合も、IPスロットリングの原因となり得ます。
IPスロットリングが発生した後の挙動
IPスロットリングが発生すると、一般的にはメール受信量に関するエラーメールが返信されます。内容は「受信数(もしくは送信数)が多すぎるため、再度時間をおいて送信してください」といったものです。また、受信ボックスの容量が足りない場合は、容量超過(不足)に関するエラーメッセージが返されます。こうしたエラーメッセージは、SMTPが規定しているステータスコードのうち、400番台(一時的なエラー)として返信されます。
また、IPスロットリングはメール受信を「遅延」させることが多いため、一定時間経過した後にメールが届く可能性もあります。もし、自社のメール配信システムが、一定時間常にメールを送り続けるような仕様であれば、数十時間経ったあとにメールが送信されるかもしれません。ISPの大半は72時間以内にIPスロットリングが解除されるため、2~3日待ってから再送信を行い、同様のエラーが発生しないかをチェックしてみてください。
IPスロットリングの回避方法
IPスロットリングは、「事後対応」が難しいという特徴があります。一旦発生すると、ISPの内部基準をクリアしない限りは解除されません。また、解除条件・方法を公開していないISPもあるため、事前に発生リスクを低下させる施策が求められます。以下は、IPスロットリングの発生を回避するための方法です。
時間をかけてメールを送信する
各ISPが設けている受信制限の基準を超えないよう、大量のメールを一斉に送信するのではなく、小分けにして少しずつ送るというのが1番簡単で確実な回避方法です。「何時までに送りたい」というような目標日時がある場合は、それまでに完了するようにメール送信全体にかかる時間を計算し、余裕を持って送信することが重要です。
IPウォームアップ
IPスロットリングは、送信元IPアドレスのレピュテーションが不十分な場合にも発生することがあります。IPアドレスを適切に運用し、レピュテーションを高める施策のことを「IPウォームアップ」と呼びます。IPレピュテーションは、急激に上昇(下降)するものではなく、日々の運用の結果として徐々に蓄積されていくものなのです。
IPウォームアップの具体的な例としては、「毎日数十通単位のメールを送信し、徐々に送信量を増やす」という方法が挙げられます。配信規模によりますが、数ヵ月単位で取り組む必要があることを念頭に置きましょう。たとえば最終的に10万人にメールを送信したい場合、1日目は50件、2日目は100件、3日目は300件、4日目は500件…というような形で、様子を見ながら少しずつ1日あたりの送信数を増やしていきます。万が一配信通数の上限を超えてしまうとIPスロットリングが発生する可能性がありますので、メールの送信数は慎重に設定しましょう。
また、メール配信に利用するサービスを変更する場合には、徐々に移行先の新規サービスからの送信数を増やしていくなど、時間をかけ段階的に移行するようにしましょう。
IPウォームアップについて詳しくは以下の記事で解説しています。
IPウォームアップとは? IPレピュテーションを向上させるためのポイントと具体的な手順 | ベアメールブログ
IPレピュテーション管理
IPレピュテーションの低下は、突然のIPスロットリングの原因になり得ます。とくに共有IPアドレスの場合は、他の使用者の挙動がIPレピュテーションを低下させることがあるため、入念にチェックすべきです。Googleが提供する「Postmaster Tools」(https://gmail.com/postmaster/)などを用いて、定期的にIPレピュテーションのチェックをしましょう。
その他の回避策
これら以外にも、次のような対策が有効です。
- メールの用途・部署などによって送信元IPアドレスを分ける
- エラーとなった宛先の定期的なクレンジング(バウンスメールの削減)
- IPレピュテーション維持・管理が含まれるメールリレーサービスの活用
まとめ
ここでは、IPスロットリングの概要と、発生原因・挙動・回避策などについて紹介してきました。IPスロットリングが発生すると、社内外のさまざまな活動が阻害されます。また、一旦発生すると基本的に「待ち」以外の手が打てないため、時間だけが浪費されかねません。IPスロットリングを事前に回避するためにも、ISPなどの基準に目を通しつつ、日ごろから回避策を講じていくことが重要です。もし、手間や労力、人手の問題から対策が難しい場合は、IPスロットリング対策を含んだ外部サービス(メールリレーサービスなど)の活用も検討してみてください。