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IPウォームアップとは? IPレピュテーションを向上させるためのポイントと具体的な手順

IPwarmup

IPウォームアップとは、今までメール送信に使われていなかったIPアドレスのレピュテーションを高め、メールが送信できるように準備することです。
IPレピュテーションのスコアが低いIPアドレスから大量のメールを一斉送信すると、ISPやキャリアからIP単位で受信制限をされ、メールの遅延や拒否を招くことがあるからです。IPウォームアップをすることで、IPレピュテーションのスコアを高め、送信制限や受信拒否などを回避することができます。
ここではIPウォームアップについて、IPレピュテーションを向上させるための基本から具体的な実行手順、ポイントについて解説します。

※本記事は最新の情報をもとに、2022/3/4に内容を更新いたしました。

IPウォームアップとは?

IPウォームアップとは、IPレピュテーションのスコアを高め、メールの受信制限や拒否(ブロック)を回避するための施策です。

ISPや携帯キャリア、メールサービスのプロバイダなどは、メールを受信する際にそのメールの送信者が信頼できるのか確認するため、送信元IPアドレスの信頼性・評判を「レピュテーション」と呼ばれる仕組みを利用してチェックしています。

送信元のIPレピュテーションが低かった場合は、疑わしい送信者としてメールの受信が制限・拒否される可能性が高まるのです。 そこで、受信側に疑われず、確実にメールを受け取ってもらうために、送信元のIPアドレスのレピュテーションを十分に高めておく必要があります。この作業が、ウォームアップ(準備運動、事前運動)に当たることから、IPウォームアップと呼ばれています。

IPウォームアップが必要なケース

一般的に、IPウォームアップが必要となるケースは以下のような場合が挙げられます。

  • 新規に取得したばかりのIPアドレスを使用する
  • 今までメール送信に使用していなかったIPアドレスを使用する
  • メールを送信するクラウドサービスで、専用のIPアドレスを使用する
  • 短時間に大量のメールを一斉送信する

IPレピュテーションとは「IPアドレスの評判や信用度」であり、そのIPアドレスが今までどのように使われ、どういったメールを送信しているのかを計測し、膨大なデータを元に統計的なリスク評価としてスコアが算出されています。

そのため、新規に取得したばかりのIPアドレスは基本的にIPレピュテーションのスコアがほとんどありません。元々所有していたIPアドレスだったとしても、メール送信に長期間使われていなかったり、企業ネットワーク内でのみ使用されていたりと、今までの行動履歴がつかみにくいIPアドレスもスコアが低いと言えます。

また、最近では外部のクラウドサービスからメールを送信する機会も多いでしょう。その際に、クラウドサービスが管理している共用IPアドレスではなく、個々のユーザーに割り振られる専用IPアドレスを使用する場合にも、IPウォームアップが必要とされることが多いです。


メール送信における共用IPアドレスと専用IPアドレスの違いやメリット・デメリットについてはこちらの記事を参考にしてみてください。
IPアドレスはメール送信にどう関係するのか? 共用IP・専用IPの違いも解説 | ベアメールブログ


とくに短時間に大量のメールを一斉送信する場合は、スパマーによる迷惑メールの送信だと警戒されやすくなるため、受信側による「IPスロットリング」と呼ばれる迷惑メール対策が作動し、メールの受信を制限されたりブロックされたりする確率が高まります。想定するメール送信数が多ければ多いほど、IPウォームアップが重要となるのです。

IPスロットリングについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
メールが届かない!「IPスロットリング」の原因・回避方法とは? | ベアメールブログ

「汚れたIPアドレス」の課題

IPアドレスを新規に取得した場合に、前所有者の使い方によっては、IPアドレスを取得した時点で既にスコアが著しく悪化している可能性もあります。

最近ではクラウドサービス(IaaS)の普及により、誰でも手軽にサーバーを作成できるようになったため、迷惑メールを送信するスパマーもまたメールサーバーを構築してスパムを送信することが容易になりました。その結果として、IaaSで新規にIPアドレスを取得すると、既にレピュテーションが地に落ちた「汚れたIPアドレス」であることが増えているのです。

IPレピュテーションは立地が近いIPアドレスにも影響を与えることがあるため、自分は何も悪いことをしていなくても、悪さをしている近隣のユーザの影響を受ける可能性があります。レンタルサーバーなどIPを共有する環境でも同じことが言え、スパマーの影響で自分も突然特定のドメインからメールをブロックされてしまう、ということが起こりえます。

こうした「汚れたIPアドレス」の課題を避けるためには、新規に取得したIPアドレスを使用する前にレピュテーションをチェックする、メールサーバーは共用IPアドレスの環境を避ける、レピュテーションがきちんと管理されているメール送信専用のサービスを利用する、といったことが挙げられるでしょう。

IPレピュテーションを向上させるためには

それでは、IPウォームアップによってレピュテーションを高めるためには、どのようなことが必要になるのでしょうか。まずは前提となるIPレピュテーションの確認方法や、IPレピュテーションの評価・スコアリングの仕組み、課題について見ていきましょう。

IPレピュテーションの確認方法

IPレピュテーションは、Webで公開されているツールを利用することで簡単に確認できます。以下にIPレピュテーションをチェックできる有名なサービスをいくつか紹介します。各サービスはそれぞれ異なるデータソースを元にスコアを算出しているため、いくつかのツールを組み合わせて確認することで、よりスコアの信憑性が高まるでしょう。

○Sender Score

Validity社が提供しているサービスで、IPごとに0〜100までのスコアで評価され、1日ごとに更新されます。目安として、スコアが70未満の場合はIPウォームアップが必要とされています。

Sender Score:https://www.senderscore.org/

○BarracudaCentral

Barracuda Networks社が提供するサービスで、IPアドレスとドメインのレピュテーションを確認できます。Barracudaの管理するリアルタイムデータベースによって、そのIPアドレスが優良か不良か確認できます。「poor」と評価された場合、レピュテーション改善の努力が必要です。

BarracudaCentral:https://www.barracudacentral.org/lookups/lookup-reputation/

○Talos Intelligence(旧Senderbase)

Cisco Systems社が提供しているサービスで、IPのメールレピュテーションとWebレピュテーションも確認できます。レピュテーションは大きく分けてGood・Neutral・Poorの3段階で、Neutralはさらにややプラスからややマイナスまで3段階に分かれます。当該のIPアドレスと近いネットワークのIPアドレスも一覧で確認することができます。

Talos Intelligence:https://talosintelligence.com/

IPレピュテーションの評価の仕組み

ここでは、IPレピュテーションの評価の仕組みについて、プラスとなる点とマイナスとなる点を解説します。

IPレピュテーションにプラスになること

  • メールの安定した送信実績
  • メールの開封数やクリック数などユーザのエンゲージメント
  • DNSの適切な設定
  • 送信ドメイン認証(SPFやDKIM)

IPレピュテーションにマイナスになること

  • メールの送信数の急激な増加
  • 存在しない宛先(Unknown Users)の割合
  • ユーザからの苦情・スパム報告
  • ブラックリストに登録される
  • DNSの設定不備
  • 送信ドメイン認証の不備
  • スパムトラップに送信している
  • メールサーバーがウイルスに感染している
  • マルウェアやフィッシングサイトなど危険なサイトへのリンクを含んでいる

IPレピュテーションとは、要は過去の送信実績を元にした受信側からの信頼度のため、一定期間安定してIPアドレスを使い続けることで信頼を得るという地道な努力が必要となります。

上に挙げたIPレピュテーションの評価にマイナスになることを避け、着実にメールを送信していくしかありません。急激な送信量の増加は、受信制限やブロックを受けるだけでなく、ブラックリストへの登録やレピュテーションへの悪影響も招きかねないため、まずは少量のメール送信から始める必要があります。 1ヵ月程度の時間をかけて送信実績を積み、IPレピュテーションのスコアを上げていくことが望ましいとされています。

IPウォームアップの具体的な手順とポイント

では、実際にIPウォームアップをする際の手順について、注意事項とともに解説します。

ステップ1:必ず受信できるアドレスをリストアップする

「すでに削除され、存在しないアドレス」や「長期間反応のないアドレス」などを除外し、確実に受信可能なアドレスのみをリストアップします。

メールが宛先不明でエラーとなったり、迷惑メールとして報告をされてしまうと、レピュテーションの向上が図れないため、「定期的に配信しているメルマガ用の送信リスト」や「オプトイン経由など受信側が能動的に受信を希望しているアドレス」などに送ることをおすすめします。

また、同じドメインやアドレスにだけ送信し続けてもIPウォームアップにはなりません。さまざまなISP・携帯キャリア・メールサービスプロバイダに対して送信することが重要なため、テスト用に作成したアドレスのみでウォームアップするのは現実的ではありません。実際の送信リストを利用することが確実です。

ステップ2:DNS・送信ドメイン認証を適切に設定する

送信元アドレスの「身元」を明確にするために、DNSの設定と送信ドメイン認証を適切に行いましょう。これによって受信側が送信元の正当性を確認できるようになるため、IPレピュテーションの低下を防ぐことができます。

迷惑メールにならないためのDNSの設定については、詳しくはこちらの記事を参考にしてみてください。

迷惑メール判定されないために注意したいDNSの設定とは? Part1 | ベアメールブログ

迷惑メールに判定されないために注意したいDNS設定とは? Part2 | ベアメールブログ

送信ドメイン認証については、詳しくはこちらの記事を参考にしてみてください。

迷惑メール対策に必要な「SPF」と「DKIM」とは?|ベアメールブログ

ドメイン認証技術「SPF」「DKIM」の特徴・メリット・デメリットとは|ベアメールブログ

ステップ3:迷惑メールとして扱われないメールを作成する

レピュテーションを高めるためには、「迷惑メール」と判定されないメールを送信する必要があります。そのため、送信するメールの形式はISPが定めるレギュレーションに準拠したものが望ましいでしょう。例えば、GmailではRFC 5322(Internet Message Format)への準拠が推奨されています。ただし、メジャーなメーラーはほぼ自動で対応しているため、形式については特段意識する必要はないかもしれません。

一方、添付ファイルの容量やNGワード、メールの内容、オプトインの有無については注意が必要です。ファイルを添付する場合はファイルサイズが1MB以下になるように意識し、成人向けコンテンツや犯罪まがいの内容を含めないようにしてください。「完全無料○○」「絶対に○○できる」「高額当選」など、迷惑メールにありがちな謳い文句の利用は、IPレピュテーションを低下させる恐れがあります。

メールに記載するURLの安全性も重要です。フィッシングサイトや、マルウェアなどが仕掛けられている有害なサイト、セキュリティレベルの低いサイトなどへのリンクを貼ると高確率で迷惑メールと判定されます。短縮URLのサービスなども、悪意のあるユーザが本当のURLを隠す目的で使用することが多いので、警戒される可能性が高いです。 IPウォームアップの期間中でも、迷惑メールだと判断されないような、ユーザに寄り添ったコンテンツを配信することが重要です。

ステップ4:送信スケジュールを決定

上記の準備が整ったら、送信スケジュールを計画し、実際に送信していきます。IPウォームアップに必要な期間や送るべきメールの量は、最終的に一斉送信したい目標通数によって変化します。一般的には、一ヵ月〜数ヶ月程度のスパンで計画を立て、徐々に送信量を増やしていく方法が望ましいでしょう。以下は、送信スケジュールの一例です。 送信スケジュールの例

1日目…50通

2日目…100通

3日目…500通

4~7日目…1,000通

8~10日目…2,000通

11~13日目…3,000通

14~15日目…5,000通

16~18日目…10,000通

19日~21日目…20,000通

22日~24日目…30,000通

25日~27日目…50,000通

28日~30日目…80,000通

30日以降…10万通以上

上記のようにスケジュールを立て、送信数を意識しながらメールを配信してみてください。夜間(21時〜7時頃)はISP・携帯キャリアなどのスパムフィルターの強度が上がると考えられているため、できるだけ日中に送信を完了しておきましょう。 また、IPウォームアップは必ずしも毎日行う必要はありませんが、定期的にスコアの書き換えが発生するため、送信の間隔が空いてしまうとせっかく上昇したスコアが低下する可能性があります。もし30日以上中断した場合は、また送信通数の少ない1日目から再開して送信量を増やしていくことをおすすめします。

ステップ5:IPレピュテーションのチェック

IPウォームアップと並行して、IPレピュテーションのチェックを行いましょう。もし、IPレピュテーションのスコアが思わしく伸びていなかったり、悪化したりしている場合は、送信数の調整や宛先リスト、メール内容の見直しを行います。IPレピュテーションのスコアは、前述したWebサイトで確認してみて下さい。

まとめ

本稿では、IPウォームアップの重要性と具体的な実行方法について解説してきました。IPウォームアップは、IPレピュテーションを高めることでメール到達率を向上させる施策です。ただし、宛先リストの精査、送信数の計画と調整、ウォームアップ中に送るメールコンテンツの検討など、さまざまな手間がかかります。

こうした手間を削減して、高いIPレピュテーションの環境からすぐにメールを送信したい場合には、外部サービスの活用が望ましいでしょう。とくに、IPアドレスが事業者側で適切に管理されている「共用型メールリレーサービス」ならばIPウォームアップも不要なため、IPレピュテーションの管理に手間をかけることなく、すぐにメールの配信が可能です。

「ベアメール」のメールリレーサービスは、IPウォームアップ不要で、すぐに利用可能です。常にIPレピュテーションを管理し、すべてのお客さまが安心してご利用いただける環境を維持しています。IPウォームアップやIPレピュテーションの改善にお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。