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MTAとは? メール転送エージェントの概要と機能、代表的な製品について解説

MTA

Last Updated on 2023.05.19

MTAとは「Mail Transfer Agent」の頭文字を取ったもので、「メール転送エージェント」を意味します。MTAはメールサーバー内で動くソフトウェアのうちの一つで、メールの送受信において中心的な役割を担っています。ここでは基本的なメール送信の仕組みとエージェントの動作から、MTAの概要と機能、代表的なMTAの製品について解説します。

メールエージェントの役割

メールが届く仕組みを解説する上で「エージェント」という言葉がよく登場します。メールエージェントとは、メール送受信におけるそれぞれの機能を担うソフトウェア(プログラム)のことです。メール送受信に関わるエージェントは、以下のものがあります。

・MUA(Mail User Agent):メールの確認や作成を行うユーザインタフェース

・MTA(Mail Transfer Agent):メールの転送

・MDA(Mail Delivery Agent):メールの配送(仕分け)

では、メールを送る際、それぞれのメールエージェントは具体的にどのような役割を果たすのでしょうか。ここではメール送信時における各エージェントの動作について解説します。

MUAの動作

MUAとは、みなさんが使用している「メールソフト」のことを指します。「メールクライアント」や「メーラー」とも呼ばれ、具体的な製品としてはOutlookやThunderbird、Mac Mailなどが挙げられます。
ユーザがMUAでメールを作成し、送信すると、メールソフトで指定しているメールサーバー(SMTPサーバー)に対してメールをアップロードします。

MTAの動作

メールサーバー内にあるMTAは、MUAがアップロードしたメールを受けとり、宛先のメールサーバーへ転送します。送信先メールアドレスのドメイン名(@link.co.jp)のDNSサーバーに問い合わせ、送信先メールサーバーのIPアドレス(123.456.789.10)を取得します。MTAは取得した情報をもとに、宛先のMTAに向けてSMTPでメールを転送します。この際、宛先が自らのサーバー内にある場合はMDAへメールを転送します。

MDAの動作

MDAでは、MTAから転送されてきたメールアドレス(hanako@link.co.jp)を確認し、該当のメールボックスにメールを格納します。

受信者はMDAからメールをPOPまたはIMAPで受信し、MUAで内容を確認します。

MTAの機能

ここではメール送信において中心的な役割を担うMTAについて、もう少し掘り下げて解説します。

MTAとは

MTAは「メール転送エージェント」と呼ばれ、ネットワーク上でメールを転送・配送するソフトウェアです。メールサーバーの中核的な役割をほとんど担っており、MDAとセットまたは一体となっている場合も多いため、SMTPサーバーやメールサーバー全体を指してMTAと呼ぶこともあります。

前述のメール送信時の動作で確認した通り、利用者がメールソフト(MUA)などから送信したメールを受け取り、ドメインをもとにメールの転送経路を決定しSMTPで転送します。また、User Unknownなどの宛先不明や一時的なエラーで宛先に届かない場合は、Return-Pathのアドレス宛にバウンスメール(エラーメール)を送ります。

役割としてはシンプルですが、大量のメールをさまざまな宛先に確実に届けるため、また昨今求められるメールセキュリティの向上のため、MTAはその他にも多くの機能を有しています。

MTAの機能

MTAの製品によっても異なりますが、基本的に以下のような機能を備えています。

  • ルーティング:MUAや別のMTAからメールを受信し、宛先のメールアドレスから転送先を調べ決定する
  • SMTPでの転送:宛先のMTAに転送する
  • ローカル配送:宛先がローカルにある場合、MDAにメールを転送する
  • アドレスの書き換え:設定に応じてエンベロープまたはヘッダのアドレスを適切な形に書き換える
  • メールキューイング:メールをキューと呼ばれる待機場所に追加し、転送に備えたり、設定の期間内繰り返し転送を試みる
  • エラーの応答:宛先にメールが届かなかった場合にバウンスメールを返す
  • アクセス制御:不審なSMTPリレーやユーザーからのアクセス、迷惑メールを制限する
  • フィルタリング:IPアドレス・ドメイン・容量・ウイルスやスパムの可能性・ヘッダの内容などに基づいてメールをフィルタ処理する
  • 監査:誰が・いつ・どこから・どのようなメールを送信したかログを残し追跡できるようにする

代表的なMTA

MTAにはいくつか製品が存在します。ここでは下記の代表的なMTAについて解説します。

Sendmail

Sendmailの歴史は長く、1983年にリリースされました。ほとんどのUNIX系OSに標準採用され、MTAの中でもデファクトスタンダードとして普及し、1996年に行われた調査によれば当時はインターネット上の約80%のSMTPサーバーにおいて利用されていました。現在では使われていないようなメール送信プロトコルもサポートしており、非常に多くの機能を備えています。一方、多機能がゆえに複雑で設定が難しく、処理性能やセキュリティ面において適切な設定をするためにも専門的な知識が必要となります。

qmail

qmailは、Sendmailの短所である設定の難しさや処理性能、セキュリティ面を改善するために1995年にリリースされたオープンソースのMTAです。多機能であるがゆえ複雑化し、多くの課題を抱えていたSendmailと比べ、設定が簡素化されており、シンプルな分高速でセキュリティ的にも堅牢な作りとなっています。ただし1998年を最後に公式による開発が終了しており、STARTTLSなどqmailがリリースされた当時にはなかった規格に対応するためには、サードパーティによるパッチや周辺ツールを使用する必要があります。

Exim

ケンブリッジ大学で開発され1995年にリリースされたオープンソースのMTAで、UNIX/Linux系OSで動作します。Linuxディストリビューションの一つであるDebianで標準のMTAとして採用されています。Sendmailのように1つのプログラムからできており、きめ細かい設定をわかりやすく行え、メールポリシーを柔軟に設定することに向いています。カナダのコンサルティング会社E-Soft Inc.が2021年に行った調査(※)によると、インターネット上でアクセスでき、使用されているMTAを識別できるサーバーのうち60.25%においてEximが使用されているという結果が出ており、世界的に広く使われているMTAだと言えます。

※参考:SecuritySpace「Mail (MX) Server Survey(November 1st,2021)」http://www.securityspace.com/s_survey/data/man.202110/mxsurvey.html (2021/11/30確認)

Postfix

Postfixは、1999年にリリースされ、現在UNIX/Linux系OSで利用できるMTAとして主流となっています。Sendmailとの互換性が高く、Sendmailの短所だったメンテナンス性や処理性能が改善されており、大量のメールをさばけるパフォーマンスの高さが強みです。また、TLSへの対応や、SMTP認証、コンテンツフィルタリング、メールヘッダのチェックによるスパムの排除など迷惑メール対策やセキュリティに関する機能も豊富に備えています。運用面の負担も軽いため、現在最も人気のあるMTAの一つと言えます。

メールリレー用のSMTPサーバーを、Postfixを使って設定する方法も紹介しています。ぜひご参照ください。

今、人気のMTAとは?Postfixの設定まで一挙解説 Part1(リレーサーバ編) | ベアメールブログ

オンプレミスMTAとメールリレーサービス

自社でMTAを構築し、メールサーバーを運用する以外にも「SMTPリレーサービス」を利用するという選択肢もあります。それぞれメリット・デメリットがあるため、用途や状況に応じて検討してみてはいかがでしょうか。

オンプレミス

メリット

  • メール送信のあらゆる面を柔軟に設定・管理できる
  • 信頼性の向上
  • 社内システムおよびソフトウェアとの統合性
  • メールシステムと社内データソースの接続性
  • APIまたはWebhookなどの接続について柔軟性が高い

デメリット

  • MTAを動かすためのハードウェアもしくは仮想サーバーが必要
  • インストール・構築・IPウォームアップなどに手間がかかる
  • インフラとメールデータベースのセキュリティ対策と運用管理
  • スケーリングの困難さ

メールリレーサービス

メリット

  • セットアップと利用が非常に手軽で、すぐに利用できる
  • オンプレミスでMTAを構築するよりもリソースとコストを削減できる
  • メールの利用量に応じた柔軟な価格設定
  • メールサーバーの運用コストの削減
  • ニーズに応じて簡単に拡張できる

デメリット

  • 長期的にはコストがかかる
  • メールリレーサービスでサポートしている接続方法に制限される
  • 配信アルゴリズムなどメール送信設定をコントロールできない

まとめ

私たちが普段当たり前のように利用しているメールは、メールを宛先へ届けるために細かく役割分担が行われ、それぞれの機能が協調することで宛先に対してメールを送り届けています。とくにメールを転送するMTAは、メールサーバーの中でも中心的な役割を担う重要なソフトウェアです。メールサーバーを適切かつ安全に利用するためには、自社の業務やリソースに合った適切なMTAを選定し、運用していく知識と経験が必要です。

もしも、メールサーバーの運用管理に不安をお持ちでしたら、メールリレーサービスの検討をおすすめします。リンクのメールリレーサービス「ベアメール」は、長年培ってきたホスティング事業者としての知識やノウハウを活かし、日々チューニングを行い運用しているため、安定した配信性能を維持することが可能です。ご興味があればぜひお気軽にお問い合わせください。