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Return-Pathとは? 到達率との関係や設定方法について解説

Last Updated on 2024.08.5

送信したメールが何らかの理由で宛先に届かなかった場合、エラーを示すバウンスメールが送信者の元に戻ってきます。この戻り先のアドレスを指定するのがReturn-Pathです。Return-Pathは、バウンスメールの管理やエラーの分析に役立てられるだけでなく、送信元の信頼性を高め、到達率を改善するために非常に重要です。
本記事では、Return-Pathの概要や重要性、確認方法、設定するメリットなどについて詳しく解説します。

Return-Pathとは

Return-Pathとは、メールヘッダに含まれる項目の一つで、配信エラーが発生した際にバウンスメールをどこへ送信するかを示すものです。メールの配信エラーが発生した場合、受信側メールサーバーはReturn-Pathに設定されているアドレスへ通知を行います。

詳しい仕組みは後述しますが、Return-Pathは「エンベロープFrom」として設定されている送信元アドレスとなるため、メールソフトなどで通常表示される送信元アドレス(ヘッダFrom)とは異なる場合があります。

エンベロープFromとヘッダFromの違いについて詳しくはこちらの記事をご参照ください。
「エンベロープFrom」と「ヘッダFrom」の違いとは? | ベアメールブログ

Return-PathとReply-Toの違い

メールヘッダの項目には「Reply-To」もあり、こちらは「返信先」を表します。Return-Pathと混同されることもありますが、それぞれ役割は異なります。

Return-Pathはメール配信時にエラーが発生した場合にサーバーが送信者にその旨を通知する連絡先であるのに対し、Reply-Toは受信者が送信者に返信する際に使われる宛先です。

Reply-Toは受信メールの「返信」ボタンをクリックした際に、自動的に宛先欄に入力される宛先を指定する箇所になります。

Return-Pathの確認方法

Return-Pathはメールヘッダに含まれる項目の一つのため、メールヘッダの情報を見ることで確認できます。

メールヘッダの確認方法は利用しているメールソフトやメールサービスによってさまざまです。ここでは、代表的なメールサービス3つのメールヘッダの確認方法について紹介します。

●  Gmail

  1. ヘッダ情報を確認したいメールを選択します。
  2. 返信アイコンの右側にある、●が縦に3つ並んだアイコン「その他」をクリックします。
  3. 「メッセージのソースを表示」をクリックします。
  4. ヘッダ情報が表示されます。

●  Yahoo! Mail

  1. ヘッダ情報を確認したいメールを選択します。
  2. 「詳細ヘッダー」をクリックします。
  3. 簡易なヘッダ情報が表示され、さらに「詳細ヘッダー」をクリックします。
  4. 詳細なヘッダ情報が表示されます。

●  Outlook

  1. ヘッダ情報を確認したいメールを選択します。
  2. 「ファイル」>「プロパティ」の順にクリックします。
  3. ヘッダ情報が「インターネット ヘッダー」ボックスに表示されます。

Return-Pathの重要性

Return-Pathは、配信エラーを把握するために重要なものですが、実はそれ以外にもメールの送信元の信頼性を高め、到達率を改善するという役割を果たしています。

バウンスメールの収集・管理

Return-Pathのアドレスを通常利用しているメールアドレスではなく、エラーの戻り先アドレスとして独立させておくことは、特にメールの大量配信を行う際に有効です。

大量の宛先リストへ一斉にメールを配信する場合、様々な理由からメールが届かないことがあります。その際にバウンスメールを普段利用しているアドレスで受信してしまうと、受信ボックスが大量のバウンスメールで溢れてしまう可能性があります。そこで、Return-Pathで通常のメールアドレスとは別の宛先を指定しておけば、バウンスメールの管理がしやすくなるメリットがあります。

配達不能な宛先へメールを送信し続けることは、送信元のレピュテーションの低下につながりかねません。バウンスメールをきちんと管理し、エラーの情報を元に宛先リストの精査をすることで、レピュテーションの維持に役立てることができるでしょう。

バウンスメールについて詳しくはこちらの記事をご参照ください。
バウンスメールのリスクを解説!具体的な対策も紹介 | ベアメールブログ

送信者の信頼性を高める

Return-Pathに正しいアドレスが設定されていることは、送信者の正当性を示してメールの信頼性を高める効果があります。

受信側はメールを受け取る際に、様々な観点からそのメールがスパムではないかチェックを行っています。そうした迷惑メール対策の一環としてReturn-pathの存在有無も確認しており、バウンスメールの戻り先(受信メールサーバー/メールアドレス)が存在せずバウンスメールが正常に送信できない場合、メールがブロックされやすくなります。

つまり、Return-Pathを正しく設定してバウンスメールを正常に受信することで、迷惑メール判定されるリスクを下げることができるのです。

DMARCにおけるアライメント検査

DMARCとは、送信ドメイン認証技術であるSPFやDKIMをさらに強化する認証規格です。

SPFとDKIMは、ヘッダFromとエンベロープFromが一致しているかまでは確認しないため、ヘッダFromを偽装しているなりすましメールでも、エンベロープFromのドメインでSPFとDKIMの認証がPass(合格)になっていることもあります。そうした事態を防ぐため、DMARCは「アライメント」という仕組みを用いて、ヘッダFromのドメインとSPFやDKIMで認証したドメインが一致しているかどうかチェックします。

DMARCの認証に合格するには、SPFもしくはDKIMのアライメントのいずれかに成功する必要があります。DMARC認証をSPFアライメントによって行う場合、ヘッダFromとReturn-Path(エンベロープFrom)のドメインが一致していないとSPFのアライメントが失敗してしまうため、Return-PathをヘッダFromのドメインと揃える必要があります。

DMARCのアライメントについて詳しくはこちらの記事をご参照ください。
DMARCのアライメントとは? DMARC認証をクリアするためのポイント | ベアメールブログ

Return-Pathの仕組み

では、Return-Pathはどこで設定できるのでしょうか。ここではReturn-Pathが設定される仕組みについてもう少し詳しく解説します。

Return-Pathが設定される仕組み

実は、Return-Pathは送信者があらかじめヘッダ情報に記載するわけではありません。SMTPの技術仕様を定めているRFC5321によれば、「メッセージ発信側のSMTPシステムは、Return-path ヘッダーフィールドが既に存在するメッセージを送信すべきではない(SHOULD NOT)」とすら書かれています。

これはどういうことかというと、Return-Pathは元々「エンベロープfrom」の情報であり、メールを受信した最後のSMTPサーバーがヘッダ情報に転記するものだからです。

SMTPクライアントから依頼を受けた送信SMTPサーバーがメールを送信し、宛先である受信側SMTPサーバーがメールを受信し、受信者のメールボックスへメールを引き渡す際に「エンベロープFrom」の情報を破棄し、その内容を「Return-Path」へと変換してメールヘッダ内に記載します。

そのため、受信者がメールのソースを確認してもエンベロープFromの情報は見つからず、代わりにReturn-Pathの情報が確認できるのです。

受信側SMTPサーバーが、エンベロープFromの情報をReturn-Pathとして記載する流れの図解

参考:RFC5321「Simple Mail Transfer Protocol」>4.4. Trace Information https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc5321#section-4.4

MAIL FROM=エンベロープFrom=Return-Path

エンベロープFromは、メール送信時にSMTPコマンドによって指定できます。

SMTPコマンドとは、SMTPクライアントがSMTPサーバーに対してメール送信を依頼するためのコマンドです。SMTPコマンドの「MAIL FROM」で指定する送信元(差出人)がエンベロープFromになり、それが前述の流れの通りReturn-Pathとして使用されます。

SMTPコマンドで指定する主な内容を整理すると、以下のようになります。

・MAIL FROM :エンベロープFrom
・RCPT TO   :エンベロープTo
・DATA     :メールの本文。以下の内容が含まれる
  - Date  :日時
  - From :ヘッダFrom
  - Subject :件名
  - To   :ヘッダTo
  - Body text :本文

SMTPコマンドを見ると、エンベロープFromと異なりヘッダFromはメール本文(データ)の一部であるということがよくわかります。

メール配信サービスのReturn-Pathをカスタマイズする方法

メール配信サービスを利用している場合、デフォルトのReturn-Pathがサービスによって設定されており、ユーザの指定したいアドレスに変更ができない場合があります。

この場合、ヘッダFromとReturn-Path(エンベロープFrom)が不一致となるため、受信側のセキュリティポリシーが厳しい場合や、DMARCを導入している場合アライメントが失敗となってしまい、メールが宛先に届かない可能性があります。

ヘッダFromとReturn-Path(エンベロープFrom)が異なる場合、Return-PathをカスタマイズすることでDMARCのアライメントに合格できるようになります。カスタムReturn-Pathの設定方法はサービスによって異なりますが、サービスのプラットフォーム上でカスタムしたいドメインの設定を行い、そのCNAMEレコードを追加する手順を踏むのが一般的です。

カスタムReturn-Pathの設定が可能か、またどのように設定するのかは、利用しているメールサービスに問い合わせてみてください。

まとめ

Return-Pathは、通常の返信先とは異なり、配信エラーが発生した際のバウンスメールの宛先を指定することのできる項目です。バウンスメールを受けるメールアドレスを分けることで、バウンスメールの管理がしやすくなり、エラーの分析やレピュテーションの維持に役立ちます。また、メールの信頼性を高め、到達率を高めるためにも重要な役割を果たしています。メールの到達率や顧客満足度の向上のため、自社のReturn-Pathについて確認してみてください。