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2025.06.20 (金)
メールの基本SMTPサーバーとは? メール送受信の仕組みとサーバーの種類、SMTPサーバーのセットアップ方法

SMTPサーバーとは、メールの送信に使われるサーバーで、メールの配信を仲介する役割を担っています。企業のメールシステムや、GmailやOutlookなどの一般的なメールサービスでも、このSMTPサーバーを通じてメールが届けられています。
本記事では、SMTPサーバーの基本的な仕組みや役割、主要サービスのサーバー情報、接続エラー時の対処法、さらには自社でSMTPサーバーをセットアップする方法までを、実践的な視点で解説します。
目次
SMTPサーバーとは?
SMTPサーバーとは、メールを送信するための通信を仲介するサーバーで、SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)というプロトコルに従って動作します。ユーザーがメールを送信すると、まずSMTPサーバーに接続され、そこから宛先のメールサーバーへとメッセージが転送されます。メール送信における「郵便局」とも言える存在であり、すべての送信メールは必ずどこかのSMTPサーバーを経由しています。
この章では、SMTPサーバーの基本的な役割や、主要なサービスにおけるSMTPサーバーの情報、そしてSMTPサーバーに接続できない場合の原因と対処法について解説します。
SMTPについてより深く知りたい方はこちらもご覧ください。
SMTPとは? メール送受信の仕組み、SMTPの課題と解決方法 | ベアメールブログ
SMTPサーバーはどこにある?
SMTPサーバーは、メール送信機能を提供する側――たとえばGoogleやMicrosoftなどのクラウドメールサービス事業者、あるいは自社メールサーバーを持つ企業などが運用しています。
ユーザがメールを送信する際には、メールソフトやアプリケーションで送信に使用するSMTPサーバーを指定する必要があります。その際に指定するSMTPサーバーの場所は、ユーザが使うメールサービスに応じて異なります。Gmailを使っていればGoogleのSMTPサーバー、会社のメールであれば自社が保有・管理しているサーバーを指定することになります。
こうしたSMTPサーバーは、インターネット上の特定のホスト名やIPアドレスによって識別され、適切な設定を行うことでメール送信が可能になります。
主要メールサービスのSMTPサーバー
代表的なメールサービスには、それぞれ専用のSMTPサーバーが用意されています。下記は一般的によく使われるサービスとそのSMTPサーバーの一覧です。
サービス SMTPサーバー ポート番号 認証 Gmail smtp.gmail.com 465 (SSL), 587 (STARTTLS) 要認証 Outlook smtp.office365.com 587 (STARTTLS) 要認証 Yahoo!メール smtp.mail.yahoo.co.jp 465 (SSL) 要認証 iCloud smtp.mail.me.com 587 (STARTTLS) 要認証
SMTPサーバーのポート番号
SMTPサーバーに接続するには、適切なポート番号を指定する必要があります。ポート番号は、通信の種類や暗号化方式によって使い分けられており、誤った番号を指定すると接続できず、メールが送信できない原因となります。
代表的なSMTPポート番号は以下のとおりです。
ポート番号 通信方式 特長 用途 25 SMTP 暗号化なしの標準的なSMTP通信用ポート。現在では主にサーバー間のメール転送(SMTPリレー)に使用。 サーバー間のメール転送 587 SMTP(SMTP-AUTH) 現在のメール送信で推奨されるポート。ユーザ認証と暗号化を組み合わせた送信方式。 メールクライアントからの送信 465 SMTPS(SMTP over SSL) SSLによる暗号化通信を行うポート。非公式ながら広く使用されている。 メールクライアントからの送信
注意が必要なのは、25番ポートへの接続が制限される「OP25B」(Outbound Port 25 Blocking)と呼ばれる対策が多くのISPやクラウドプロバイダーで実施されていることです。これは大量の迷惑メール送信を防ぐための措置ですが、企業が独自にSMTPサーバーを運用する際には考慮すべき点となります。
SMTPサーバーに接続できない場合
SMTPサーバーへの接続がうまくいかない場合、メールは送信されず、エラー通知(バウンスメール)が返されることがあります。主な原因には以下のようなものがあります。
- ポート番号の設定ミス(例:465の代わりに25を使用している)
- SMTP認証情報(ユーザー名・パスワード)の誤り
- ウイルス対策ソフトやファイアウォールによる通信ブロック
- インターネットサービスプロバイダによるポート制限(OP25B)
- 送信元IPアドレスのブラックリスト登録
さらに、近年はセキュリティ強化の一環として、GmailやMicrosoft 365をはじめとする主要なメールサービスで、SMTP AUTH(ユーザー名とパスワードによる認証)を段階的に廃止する動きが進んでいます。
例えば Google Workspace では、2025年3月にSMTP AUTHが無効化され、ユーザ名とパスワードによるログインはブロックされるようになっています。Microsoftにおいても、 Exchange Online でのSMTP AUTHは原則廃止となり、現在有効にしているテナントにおいても2025年9月には無効化される予定です。
GmailのSMTPサーバーやExchange OnlineのSMTPサーバーを利用している場合、これらの影響でSMTPサーバーに接続できなくなっている可能性があります。このような場合は、OAuth 2.0対応の送信手段や、外部のSMTPリレーサービスの利用を検討する必要があります。
GmailやExchange OnlineのSMTP AUTH廃止についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
GmailのSMTPサーバーでメールが送れない? 基本認証廃止が原因かもしれません | ベアメールブログ
Exchange OnlineでのSMTP AUTH廃止とは? 影響と対策を解説 | ベアメールブログ
メール送信・受信の仕組み
メールは日々当たり前のように送受信されていますが、その背後では複数のサーバーやプロトコルが連携して動作しています。この章では、メールが宛先に届くまでの流れと、メール送信に関わるサーバーやその機能について、もう少し技術的に掘り下げて解説します。
メール送信の流れ
- ユーザがメールソフト(例:OutlookやThunderbird)でメールを作成し、送信操作を行います。
- あらかじめ設定されたSMTPサーバーに接続し、メールが送られます。
- SMTPサーバーは、宛先メールアドレスのドメイン情報をもとに、DNSサーバーを参照して、どのサーバーにメールを届けるべきかを判断します。
- 宛先のメールサーバーを特定すると、SMTPプロトコルを使ってそのサーバーにメールを転送します。
メール受信の流れ
- 相手のSMTPサーバーから転送されてきたメールは、受信側のメールサーバーで受け取られ、ユーザごとのメールボックスに保存されます。
- ユーザがメールソフトで「受信」操作を行うと、サーバーとPOP3またはIMAPというプロトコルで通信します。
- サーバーは、保存されているメールをクライアントに提供し、ユーザは内容を閲覧・管理することができます。

各サーバーの役割
SMTPサーバー
SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)というプロトコルに基づき、メールを送信元から宛先のメールサーバーへと中継・転送します。
この送信機能は、技術的には「MTA(Mail Transfer Agent)」と呼ばれるソフトウェアが担っており、メールの配送ネットワークの中核となる存在です。
⚫︎主な役割
- メールソフト(MUA)から送信依頼を受け取る
- DNSサーバー(MXレコード)を参照して宛先のサーバーを特定
- SMTPプロトコルを使って相手サーバーにメールを転送
- 認証や暗号化(SMTP AUTH、STARTTLSなど)をサポート
⚫︎代表的なソフトウェア
- Postfix:Linuxで広く使われている高性能MTA
- Sendmail:古くからあるMTA、柔軟だが設定が複雑
- Exim:Debian系Linuxでよく使われるMTA
- Microsoft Exchange Server:Windows環境での商用メールサーバー
POP/IMAPサーバー
受信者がサーバー上に保存されたメールを取得するためのサーバーです。SMTPサーバーによって配信されたメールは一旦サーバー上のメールボックスに保存され、ユーザーはPOP3またはIMAPというプロトコルを使ってアクセスします。
POP(Post Office Protocol)はメールをローカルにダウンロードして保存する方式であり、IMAP(Internet Message Access Protocol)はサーバー上でメールを管理・同期する方式です。
⚫︎主な役割
- メールボックスへのアクセスをPOP3/IMAPで提供
- ユーザー認証(ID/パスワードなど)
- メール一覧の取得、本文のダウンロード、既読/未読の管理(IMAPのみ)
- サーバーと複数端末の同期(IMAP)
- セキュリティ強化のための暗号化(STARTTLS、SSL)
⚫︎代表的なソフトウェア
- Dovecot:高性能なPOP/ IMAPサーバー
- Courier IMAP:比較的軽量で設定が明快
- Cyrus IMAP:大規模・商用環境向け、高機能だが設定難易度高
- Microsoft Exchange Server:IMAPにも対応しつつ、独自プロトコルでOutlookと連携
DNSサーバー
DNSサーバーは、ドメイン名とIPアドレスを対応付けるサーバーで、メール送信時には宛先ドメインのメールサーバーを特定する役割を担います。
さらに、SPF・DKIM・DMARCといった送信ドメイン認証の情報の提供や、AレコードやMXレコード、逆引き(PTR)などを利用した送信元の信頼性確認にも使われており、配送先の判断と送信元の正当性検証の両面で重要な役割を果たしています。
⚫︎主な役割
- MXレコード:ドメインの配送先メールサーバーを特定する
- Aレコード:MXレコードで得たホスト名をIPアドレスに変換する
- PTRレコード:送信元IPアドレスとドメイン名の整合性を確認する
- SPFレコード:送信元IPアドレスが許可されているか確認する
- DKIMレコード:DKIM署名の検証に必要な公開鍵を取得する
- DMARCレコード:DMARCポリシーやレポートの送信先を確認する
これらのサーバーがそれぞれの役割を果たすことで、私たちのメールは送受信されているのです。
SMTPサーバーをセットアップする方法
メールクライアントを通じた業務メールのやり取りについては、自前のメールサーバーではなくGoogle WorkspaceやMicrosoft 365といったクラウドサービス利用に移行している企業も多いでしょう。しかし、社内の複合機や業務システムからのメール送信などについては、SMTPサーバーが必要となるケースがまだまだあります。そのような場合にSMTPサーバーを用意する方法として、現実的かつ信頼性の高い選択肢は、大きく以下の3つに分けられます。
Google Workspace / Microsoft 365 をSMTPサーバーとして利用する
Google Workspace や Microsoft 365 は、クラウド型のグループウェアとしてメール送信機能を提供しており、SMTPサーバー(smtp.gmail.com / smtp.office365.com)として複合機や社内システムからのメール送信にも対応可能です。
しかし、SMTP AUTH(ID・パスワードによる基本認証)は、セキュリティ強化の方針により廃止・制限が進んでおり、利用時には注意が必要です。現在でも利用可能な条件は以下の通りです。
- OAuth 2.0認証を利用した接続(Google Workspace / Microsoft 365 のいずれも対応)
- Google Workspace の SMTPリレー(IPアドレス認証)
- SMTP AUTHを使わずに利用できるが、送信元IPの固定化が必要
- Microsoft 365 の専用SMTPリレー(コネクタ設定)
- ドメインやIPアドレスを指定して送信許可を与える方式
⚫︎メリット
- 業務用の安定した送信インフラを利用可能
- SPF・DKIM・DMARCなどの認証設定も整備しやすい
- 管理コンソールから送信設定やポリシー制御が可能
⚫︎デメリット
- SMTP AUTHによる簡易な接続は廃止されている
- 古い複合機やシステムでは接続できない場合がある
- OAuthやリレー構成に対応するにはアプリ側の対応やネットワーク要件が必要
- 利用には有料ライセンスが必要(無料プランは非対応)
自前でSMTPサーバーを構築する
LinuxサーバーなどにPostfixなどのMTAを導入し、SMTPサーバーを自分で構築・運用する方法です。構成やセキュリティ設定をすべて自社で制御できるため、システム全体の自由度が高い反面、設計・保守・トラブル対応まで含めた十分な知識とリソースが求められます。
⚫︎メリット
- 設定や構成を細かく制御できる(送信ポリシー、ログ管理、フィルタリング等)
- 運用ノウハウが蓄積できる(教育・監査の観点でも有効)
⚫︎デメリット
- セキュリティ・送信認証(SPF/DKIM/DMARC)などの正しい設定が不可欠
- IPレピュテーションの管理や障害対応など運用に人的なリソースやノウハウが必要
- メールサーバーの拡張性が低い
自社で構築する際のポイントと注意点は以下の記事で詳しく解説しています。
SMTPサーバー構築のポイントと注意点。自社で構築することのメリット・デメリットとは – ベアメールブログ
SMTPリレーサービスを利用する
Amazon SES、SendGrid、ベアメールなど、クラウド上で提供されているSMTPリレーサービスを利用し、アプリケーションや業務システムからのメールを中継して送信する方法です。インフラ構築の手間がなく、メールの到達率やスケーラビリティにも優れるため、開発効率や運用の負担軽減につながります。
⚫︎メリット
- インフラ不要で、短期間で導入できる
- 高い到達率とスループットで、大量配信にも対応
- SPF/DKIMなどの認証設定も手軽に可能
- 送信ログやバウンスの管理もしやすく、運用効率が高い
⚫︎デメリット
- 配信通数に応じたサービス利用料がかかる
- APIキー形式の認証の場合は、複合機などで利用できないことがある
- サービス基盤が海外の場合、企業のセキュリティポリシーによっては利用できない可能性がある

まとめ
本記事では、SMTPサーバーの基本的な仕組みから、SMTPサーバーをセットアップする際の選択肢とそれぞれのメリット・デメリットまで解説しました。SMTPサーバーはメール送信の要であり、適切な設定と運用が企業のコミュニケーションの質を左右します。自社構築かクラウドサービス活用かは、組織の規模やリソースを考慮して判断すべき重要な決断です。
運用負担やセキュリティリスクに不安がある場合は、ベアメールのようなメール配信サービスも有効な選択肢です。ベアメールはSMTPサーバー構築・運用の煩雑さを解消し、高い到達率での安定したメール配信を実現します。SMTPサーバーの選定やメール配信に課題をお持ちであれば、まずはお気軽にご相談ください。