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2023.10.05 (木)
メールの基本IPレピュテーションとドメインレピュテーションとは? レピュテーション向上のポイントを解説
Last Updated on 2024.08.5
メールの到達率に大きく影響するのが、送信元を評価する「レピュテーション」です。携帯キャリアやメールサービスプロバイダはメール受信時に送信元のレピュテーションスコアをチェックし、メールの受信・拒否の判断材料にしているため、メール配信担当者はレピュテーションの向上・維持に努める必要があります。 メール配信におけるレピュテーションといえば送信元IPアドレスを評価する「IPレピュテーション」が有名ですが、ドメイン名のレピュテーションもメールの到達率に影響することをご存知でしょうか?本記事では、レピュテーションの概要や、IPレピュテーション・ドメインレピュテーションの詳細、レピュテーションを向上させる方法について詳しく解説します。
目次
レピュテーションとは
レピュテーションとは、「評判」「評価」「信用」などの意味を持つ英単語です。ビジネス分野では、企業に対する世間からの評判や信用といった意味で使われます。
IT分野においては、対象のサーバーやデータについて過去の実績や利用履歴から評価を行い、危険でないかを判定する仕組みとして使われます。レピュテーションはセキュリティ分野で主に活用されていますが、迷惑メールを防止するための仕組みとしても用いられています。
メールにおけるレピュテーションは、送信者の過去の送信量や送信内容から迷惑メール送信者(スパマー)であるかどうかを評価し、メール受信の許可・拒否を判定するものです。レピュテーションが高いほど受信者のメールボックスに届きやすくなり、大量のメールを配信してもブロックされづらくなります。反対にレピュテーションが低ければ、携帯キャリアやISP、メールサービスプロバイダは警戒して受信制限を行なったり、迷惑メールフォルダに振り分けたり、ブロックしたりする可能性が高まります。
レピュテーションのスコアは、過去にその送信者が迷惑メールを送っていないか、IPアドレスやドメインがブラックリストに載っていないか、メール受信者から迷惑メールとして申告されていないか、などのさまざまな観点から算出されます。
レピュテーションスコアは過去の実績から判断されるため、全くメール配信に利用したことのない新しいIPアドレスやドメイン名もレピュテーションは低い状態です。そのため新しい環境でメール配信を行う場合はレピュテーションを高めるための準備が必要となります。また、一度低下したレピュテーションを元のスコアに戻すには非常に手間と時間がかかるため、低下させないように運用することも重要です。
レピュテーションの種類
メールにおけるレピュテーションといえば「IPレピュテーション」が広く知られていますが、ドメイン名を評価する「ドメインレピュテーション」もメールの到達率に影響しています。それぞれについて詳しく解説します。
IPレピュテーションとは
IPレピュテーションとは、送信メールサーバーのIPアドレスによって送信者を評価する仕組みです。特定のIPアドレスから送信されたメールの実績や利用状況から、レピュテーションスコアが算出されます。
IPアドレスは自社が専有するIPアドレスと、複数の利用者で共同利用する共有IPアドレスの2種類があります。
レンタルサーバーやメール配信サービスなど、共有IPアドレスを利用している場合、IPレピュテーションも共有することになります。自社は正当なメールの配信をしていても、共有している他のユーザーがスパム行為もしくは疑われる行為をした場合、レピュテーションスコアが下がり同じIPアドレスを利用している自社まで影響を受ける可能性があります。
またIPレピュテーションは、近隣のIPアドレス、つまり問題のあるIPアドレスを含むネットワーク全体を評価する傾向にあります。クラウドサービス(IaaS)などで取得したIPアドレスのレピュテーションをチェックすると、過去にスパム行為に使用されたか近隣による影響で既にスコアが低い場合があるため注意が必要です。
ドメインレピュテーションとは
ドメインレピュテーションとは、IPアドレスではなくドメイン名をもとに送信者を評価する仕組みです。IPレピュテーションと同様に、特定のドメインの過去の実績や利用状況からレピュテーションスコアが算出されます。
ドメインレピュテーションは、メール内に含まれる以下のようなドメインをチェックします。
- メールの差出人アドレス(ヘッダFrom)のドメイン
- Return-Path(エンベロープFrom)のドメイン
- DKIMの署名ドメイン
- メール本文内のURLリンクのドメイン
通常メール送信時に意識しているのはメールソフトで確認できる差出人アドレス(ヘッダFrom)だと思いますが、エンベロープFromと呼ばれる送信メールサーバーで設定されるアドレスや、メール本文内のURLリンクのドメインの評判もチェックされています。差出人アドレスのドメインに問題がなかったとしても、コンテンツ内に記載したURLのドメインのレピュテーションが低い場合にも、迷惑メールとして扱われる可能性が高まるため注意が必要です。
ヘッダFromとエンベロープFromの違いや、エンベロープFrom(Return-Path)の仕組みについて詳しく知りたい方は以下のブログをご参照ください。
「エンベロープFrom」と「ヘッダFrom」の違いとは? | ベアメールブログ
Return-Pathとは? 到達率との関係や設定方法について解説 | ベアメールブログ
ドメインレピュテーションの必要性
なぜIPレピュテーションだけでなく、ドメインレピュテーションも必要なのでしょうか?
IPレピュテーションはIPアドレスに紐付く指標のため、レピュテーションが低下した場合、別のIPアドレスに変更するという手段が取れます。IPv6への移行によりアドレス空間が増加したことにより、スパム業社がIPアドレスを簡単に変更してブロックを回避する恐れが出てきました。そこで重視されたのが、ドメインレピュテーションです。ドメインの場合、特に稼働しているサービスであれば簡単には変更しにくいためです。
また正当な送信者にとっては、使用するIPアドレスの変更や新規追加、サービスプロバイダの乗り換えなどの必要が生じた際に、0からのスタートではなくこれまで積み上げたドメイン全体のレピュテーションを引き継げるというメリットもあります。
携帯キャリアやISP、メールサービスプロバイダーなどは、IPレピュテーションとドメインレピュテーションを総合した送信者のレピュテーションを評価する傾向が強まっているため、メール配信者はIPとドメイン両方のレピュテーションに配慮する必要があります。
IPレピュテーションとドメインレピュテーションの関係
IPレピュテーションとドメインレピュテーションは異なる概念ではありますが、相互に影響を与える可能性はあります。
例えばIPレピュテーションが低い環境からメールを大量に配信しようとすると、ブロックされてメールが届きにくくなるリスクが高まります。そして配信エラー率が高まった状態でメールを配信し続けていると、ドメインのレピュテーションまで傷ついてしまう危険性があります。
ただし、ドメインのレピュテーションが十分に高い状態であれば、IPレピュテーションがあまり高くない新しい環境でも、受信側のキャリアやプロバイダはドメインを評価して受け入れてくれやすいようです。
反対にドメインのレピュテーションが低い場合は、IPレピュテーションが高い環境から配信しても到達率が改善できない可能性があります。
IPアドレスは変更することもできますが、ドメインはそう簡単に変更できるものではありません。ドメインレピュテーションが低下してしまう前に、IPとドメインのレピュテーションに気を配り、高い状態を維持できるよう取り組むことが重要です。
レピュテーションの確認方法
自社のIPアドレスやドメインのレピュテーションは、各キャリアやメールサービスプロバイダが独自のアルゴリズムによって評価しているため正確に知ることはできませんが、オンラインサービスを利用することである程度確認できます。ただし、レピュテーションの評価基準や結果はサービスによって異なるため、複数のサービスで確認するのがおすすめです。ここではIPレピュテーションとドメインレピュテーションの両方を確認できるサービスを紹介します。
Talos Intelligence
Talos Intelligence(https://talosintelligence.com/)はCiscoが提供するレピュテーションチェックツールです。メールサーバーのIPアドレスかドメインを入力することでレピュテーションを確認できます。
レピュテーションは「Good」(良い)「Neutral」(中立)「Poor」(悪い)の3段階で評価され、Goodであれば心配の必要はありませんが、Poorだった場合送信したメールがほとんど届いていない可能性があります。Neutralはその中間で改善の余地があるということになりますが、配信量が少ないなどの理由であまり情報がない場合にもNeutralと表示されます。
BarracudaCentral
BarracudaCentral(https://www.barracudacentral.org/lookups)ではBarracuda Networks社のブロックリストに自社のIPアドレスやドメインが登録されていないか確認することができます。
Barracuda Reputation SystemはIPレピュテーションとURL(ドメイン)レピュテーションを組み合わせて、評判の悪い送信者をリストするリアルタイムデータベースです。もしここに自社のIPやドメインが登録されていた場合は、レピュテーションが低い状況のため改善が必要です。
Google Postmaster Tools
Google Postmaster Tools(https://www.gmail.com/postmaster/)はGmailへの配信に関するデータを確認できるサービスです。
IPレピュテーション、ドメインレピュテーション、配信エラーの原因、受信者によって迷惑メールとして分類された割合など様々な情報を確認できます。Googleがその送信者をどのように判定しているか、レピュテーションを高・中・低・悪いの4段階で確認することができますが、送信量が数ない場合は表示されないこともあります。
このツールを利用するには、診断したいドメインのDNSに所定のTXTレコードを追加して、ドメインの所有権を証明する必要があります。
レピュテーションを向上させるポイント
それでは、レピュテーションを向上させるために注意すべきポイントについて解説します。
送信ドメイン認証を行う
SPFやDKIM、DMARCなどの送信ドメイン認証をきちんと設定しましょう。これらの送信ドメイン認証を導入し、認証をクリアすることは「なりすましメール」ではないことの証明になり、送信者の信頼性を高めます。
バウンスメールを管理・分析する
配信エラーを通知するバウンスメールはきちんと受信し、エラーになった理由を分析しましょう。宛先が存在しないからなのか、スパムとしてブロックされているからなのか、原因を特定して対処します。メールのエラー率(バウンス率)が高まるとレピュテーションに悪影響があるため、できるだけエラー率は低く保つことが重要です。
配信リストのクリーニング
メールの配信リストから無効なアドレス、購読解除したアドレスなどを定期的に削除します。前述した通り、メールの配信エラー率を低くすることはレピュテーション低下を防ぐために重要です。また無効な宛先・無関心な受信者を除外することで開封率が高まれば、レピュテーションの向上につながります。
購読解除の方法を簡単にする
メルマガの配信停止をしたいと思った時に、購読解除の方法がメール内に記載されていなかったり、解除方法が複雑で面倒だったりすると、受信者はそのメールをブロックしたり迷惑メールとして報告するリスクが高まります。ブロックや迷惑メール報告といった行為はレピュテーションにダメージを与えるため、購読解除は親切な方法を用意しましょう。
エンゲージメントの向上に取り組む
開封率やクリック率、返信といった受信者からのエンゲージメントはレピュテーションにポジティブな影響をもたらします。反対にほとんど開封されないメールは、受信トレイに配信される可能性が低くなります。
購読者の関心に沿うコンテンツを、開きたくなる件名で配信するように心がけましょう。あまりにも頻繁な配信は購読解除やブロックの要因となるので、様子を見ながら受信者が不快に思わない頻度で定期的に配信します。配信スケジュールは、できるだけ毎週同じ時間にすることが効果的と言われています。
ウォームアップを行う
新しいIPアドレスやドメインを使用する場合、過去の実績がないためレピュテーションは0の状態です。レピュテーションが低い状態で大量のメール配信を行うと、受信が拒否される可能性が高くなります。IP・ドメインのどちらについてもレピュテーションを高めるためには、はじめは少ない件数から配信を始め、徐々に件数を増やしていくことでレピュテーションを高める(=ウォームアップ)ことを意識しましょう。
ウォームアップは、送信ドメイン認証や配信リストのクリーニング(確実に受信してもらえる配信リスト)、エンゲージメントを高める工夫など、前述したレピュテーション向上のポイントを押さえた上で実施することが重要です。受信側に評価されるメール配信を行わなければ、時間をかけて配信数を増やしてもレピュテーションの向上は望めません。
具体的なウォームアップの手順やスケジュールなど、詳しくはこちらの記事をご参照ください。
IPウォームアップとは? IPレピュテーションを向上させるためのポイントと具体的な手順 | ベアメールブログ
レピュテーションの高い環境から配信するなら
IPやドメインのレピュテーションを高めるには、レピュテーションの評価にマイナスになることを避け、時間をかけて少しずつ送信数を増やしていくしかありません。1ヶ月から数ヶ月の時間と、宛先リストの精査、送信数の計画と調整、コンテンツの作成など様々な手間がかかります。
ドメインのレピュテーションは自力で上げるしかありませんが、サービスを活用することですぐにIPレピュテーションの高い環境からメール配信をすることも可能です。特にIPアドレスとレピュテーションが事業者によって管理されている共用型メールリレーサービスであれば、今の環境からメールをリレーするだけで利用可能です。
ベアメール メールリレーサービスは、国内データセンターに高いIPレピュテーションの配信基盤を備えており、国内携帯キャリアや主要メールサービスへの到達率改善が可能です。IPウォームアップも不要で、お客様はIPレピュテーションを意識せず、安心してメールを配信可能です。
トライアル期間中に配信能力や到達率をご確認いただき、利用開始後も到達率改善のサポートを行うことで、すべてのお客さまに安心してご利用いただける環境を維持しています。
レピュテーションの低下やウォームアップ、メールの不達などにお悩みがあれば、ぜひベアメールにお気軽にお問い合わせください。
まとめ
メールにおけるレピュテーションは、メールの到達率に影響する重要な指標です。今まではIPレピュテーションが広く知られ意識されていましたが、ドメインレピュテーションも重視されるようになっています。そのため、メール配信担当者はIPアドレスだけでなくドメインの運用にも配慮する必要があります。
正しい知識を得た上で、なりすまし対策やウォームアップなどの対策を行い、レピュテーションを高めてメール到達率の向上を目指しましょう。