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メールのポート番号とは? SMTP・POP・IMAPそれぞれの推奨設定を解説

メールのアカウントを新しく設定する際、「ポート番号」という項目を目にして戸惑った経験はないでしょうか。ただ数字を入力するだけの項目に見えますが、メールの送受信において非常に重要な役割を担っています。

ポート番号を誤って設定すると、メールが送れない・届かないといった不具合が起きます。さらに、通信が盗聴される危険性などセキュリティ上のリスクも高まってしまいます。

この記事では、メールのポート番号とは何かという基本的な内容から、プロトコルごとの違い、現在推奨されている安全なポート番号まで、初心者の方にも分かりやすく解説します。この記事を最後まで読めば、自信を持って正しいメール設定を行えるようになります。

ポート番号とは? メール設定に欠かせない基本知識

ポート番号とは、IP アドレスがインターネット上の「住所」を示すのに対し、コンピューター内で動作する各プログラム(サービス)を識別する「窓口番号」のようなものです。例えば、1台のコンピューター上で、Webサーバーやメールサーバーなど複数のサービスが同時に稼働しているとします。このとき、同じIPアドレスを使っていても、どのサービス宛ての通信なのかを区別する必要があるため、それぞれに異なるポート番号が割り振られています。

メールソフトは、このポート番号を手がかりに「どのサービスと通信すべきか」を判断し、指定された番号に従ってメールサーバーとのやりとりを行います。もし誤った番号を設定した場合は、通信できなかったりエラーになることがあります。

そのため、メールを正しく送受信するためには、メール専用に割り当てられた正しいポート番号を設定することが不可欠です。

項目例え役割
IPアドレス建物の住所
(例: 東京都〇〇区1-1-1)
ネットワーク上のどのコンピューターかを特定する。
ポート番号部署の窓口番号
(例: 郵便受付窓口、荷物受取窓口)
コンピューター内のどのサービス(プログラム)かを特定する。

メール送受信の仕組みと3つのプロトコル

メールのポート番号が複数存在するのは、メールのやり取りで使われる「プロトコル」が複数あるためです。プロトコルとは、コンピューター同士が通信をする際の共通のルールや手順のことを指します。

メールの世界では、主に「送信」「受信」「同期」という3つの異なる役割を担うプロトコルが使われており、それぞれに異なるポート番号が割り当てられています。ここでは、SMTP、POP、IMAPという3つの主要なプロトコルについて解説します。

SMTP(Simple Mail Transfer Protocol): メールを送信する役割

SMTPは、作成したメールを相手のメールサーバーまで届けるためのプロトコルで、送信元から送信先へ段階的に中継して相手に届ける仕組みです。

例えば、手紙をポストに投函すると郵便局員が集荷して仕分けを行い、いくつかの中継地点を経て最終的に相手の郵便受けへと届けられます。SMTPもこれと同じように、複数のメールサーバーを経由しながら、目的の相手にメールを届けます。

このように、メールソフトが送信操作を行う際には、必ずSMTPというプロトコルが使われ、メールが正しく配送されるよう制御しています。

SMTPの詳細については以下の記事を参考にしてください。

SMTPとは? メール送受信の基礎知識と、SMTPサーバーの機能と課題|ベアメールブログ

POP(Post Office Protocol): メールを受信する役割

POPは、受信メールサーバーに届いたメールを、自分のPCやスマートフォンなどの端末にダウンロードして「受信」するためのプロトコルです。POPは「Post Office Protocol」の略で、郵便局の私書箱に届いた手紙を全て自宅に持ち帰るイメージです。

この方式のメリットは、一度ダウンロードすればオフラインでもメールを読める点です。一方で、POPで受信したメールは端末に移動しサーバーに残らないため、最初に受信した端末以外では確認できません。そのため、複数端末で同じメールを使いたい場合には不向きです。

IMAP(Internet Message Access Protocol): メールを同期する役割

IMAPもPOPと同様にメールを受信するためのプロトコルですが、その仕組みは大きく異なります。POPがメールを端末にダウンロードして管理するのに対し、IMAPはサーバー上に保存されたメールと各端末の状態を常に同期させる仕組みです。

これにより、PCで読んだメールはスマートフォンでも既読になり、スマートフォンで削除したメールはPC上からも削除されるなど、すべての端末でメールの状態が一貫して保たれます。複数のデバイスを使い分けることが一般的になった現代では、IMAPが受信プロトコルの主流となっています。

プロトコル別!メールのポート番号一覧

それでは、具体的に各プロトコルでどのポート番号が使われるのかを見ていきましょう。ポート番号は、通信を暗号化するか否かでも異なります。暗号化(TLS)は、通信内容を第三者に盗み見られるのを防ぎ、安全性を高めるために重要な技術です。

プロトコルポート番号暗号化主な用途・備考
SMTP25なしサーバー間のメール転送用。ユーザが利用するのは非推奨です。
587STARTTLSメール送信時の推奨ポート(Submission Port) ID・パスワードによる認証が必須で、STARTTLSによる暗号化通信に対応。
465TLS接続開始時から暗号化を行うImplicit TLS方式を利用する送信用ポート。
POP110なし/(STARTTLS)暗号化なしのPOP受信用ポート。
995TLS暗号化ありのPOP受信で利用されるポートです。(POP over SSL/POP3S)
IMAP143なし/(STARTTLS)暗号化なしのIMAP受信用ポート。
993TLS暗号化ありのIMAPで利用されるポートです。(IMAP over SSL/IMAP4S)

SMTPサーバーのポート番号(25,587,465)

メール送信に使用されるSMTPサーバーでは、主に「25」「587」「465」という3つのポート番号が知られています。

25番ポート

「25番ポート」は、伝統的にメールサーバー間のメール転送で使われてきたポートです。そのため、過去にはユーザが自分のメールソフトから送信する際にも広く使われていました。しかし、送信時に認証を必要としないため、スパマーが迷惑メールを送る際に悪用されやすいという問題がありました。

現在では、迷惑メール対策の一環として、多くのインターネットサービスプロバイダがOutbound Port 25 Blocking(OP25B)を導入し、一般のユーザがこのポートを使って外部にメールを送信することを制限しています。

このような背景から、個人や企業のメール送信には、より安全性の高い587番ポートの利用が推奨されています。

OP25Bについての詳細は以下の記事を参考にしてください。

メール送信規制「OP25B」とは?25番ポートブロックの概要と回避策|ベアメール ブログ

587番ポート

「587番ポート」は、「サブミッションポート」とも呼ばれ、ユーザがメールソフトからメールを送信する際に現在最も推奨されているポートです。

587番ポートはSMTP AUTHによるユーザ認証が必須のため、不正利用の防止や送信者の特定が可能です。また、STARTTLSによる通信の暗号化にも対応しており、安全性の高い送信が可能です。

465番ポート

「465番ポート」は、メール送信時に接続の最初からTLSで暗号化する方式であるSMTPSで利用されるポートです。このように「最初から暗号化する方式」をImplicit TLS(強制TLS、暗黙的TLS)と呼びます。

一時期は非推奨とされていましたが、現在はRFC 8314で正式にSMTPS用の推奨ポートとして再認定され、多くのメールソフトやシステムで広く使われています。

POPサーバーのポート番号(110,995)

メール受信に使うPOPサーバーでは、「110」と「995」の2つが主に使われます。

110番ポート

「110番ポート」は、暗号化なしでPOP通信を行う際の標準的なポートです。ただし、サーバーとメールソフトの両方がSTARTTLSに対応していれば、設定することでSTARTTLSを利用した暗号化通信が可能です。

しかし、TLSによる暗号化通信を前提とする995番ポートの使用が一般的になっており、現在では基本的に推奨されていません。

995番ポート

「995番ポート」は、TLSを使用して暗号化されたPOP通信を行う際の標準ポートです。安全にメールを受信するためには、110番ではなく、この995番ポートの使用が強く推奨されます。

IMAPサーバーのポート番号(143,993)

複数の端末でのメール同期に便利なIMAPサーバーでは、「143」と「993」の2つが使われます。

143番ポート

「143番ポート」は、暗号化なしでIMAP通信を行う際の標準的なポートです。

こちらも110番ポート同様、STARTTLSを利用できる場合は暗号化通信は可能です。ただし、最初から通信全体をTLSで保護する993番ポートの利用が、より安全な選択肢とされています。

993番ポート

「993番ポート」は、IMAPでメールを受信する際に、接続の最初からTLSで暗号化通信を行うための標準ポートです。暗号化を常に確保したい場合には、この993番ポートを選ぶのが一般的です。

暗号化通信でセキュリティを高める重要性

ポート番号の選択とあわせて、通信を「暗号化」することも非常に重要です。暗号化されていない通信は、データが平文(誰でもそのまま読める状態)で送受信されるため、悪意のある第三者に通信を盗聴(傍受)されるリスクがあります。

もしメールの通信が盗聴された場合、メール本文の内容はもちろん、IDやパスワードといった認証情報が漏洩し、アカウント乗っ取りなどの被害に遭う危険性があります。

これを防ぐのが「TLS」という暗号化技術です。

暗号化にはImplicit TLS(暗黙的TLS、強制TLS)とSTARTTLS(明示的TLS、日和見TLS)の2種類の利用方式があります。Implicit TLSは、最初から暗号化された通信経路(ポート)を使用する方式で、暗号化されていない接続は許可されません。これに対しSTARTTLSは、一旦平文で接続した後、通信途中で暗号化(TLS)に切り替える方式です。

方式暗号化のタイミング対応ポート備考
Implicit TLS
(暗黙的TLS)
接続時点からTLS暗号化465(SMTPS)
993(IMAPS)
995(POP3S)
TLSを前提とした接続。非対応サーバとは通信不可
STARTTLS
(Explicit TLS:明示的TLS)
平文で接続後にSTARTTLSコマンドでTLSに切り替え587 (SMTP)
など
接続先がSTARTTLSに対応していない場合、平文で通信を行う

現在推奨されているポート番号(587番、995番、993番)は、いずれも暗号化に対応しています。メールソフトでアカウントを設定する際は、ポート番号を正しく選択するとともに、「SSL/TLSを有効にする」「暗号化接続を使用する」といったオプションを必ずオンにするようにしましょう。

利用中のポート番号を確認する方法

最後に、代表的なメールソフトでのポート番号の設定・確認手順をご紹介します。

Windows Mailの場合

Windowsに標準で搭載されているメールアプリでは、以下の手順で確認できます。

  1. メールアプリを起動し、画面左下にある歯車の形をした「設定」アイコンをクリックします。
  2. 右側にメニューが表示されますので、その中から「アカウントの管理」を選択してください。
  3. 設定を確認したいアカウントをクリックし、「メールボックスの同期設定を変更」へと進みます。
  4. 「メールボックスの詳細設定」をクリックすると、受信メールサーバーと送信メールサーバーに設定されているポート番号が表示され、確認することができます。

Microsoft Outlookの場合

Microsoft Outlook(デスクトップ版)では、以下の手順で確認が可能です。

  1. Outlookを起動して「ファイル」タブをクリックします。
  2. 「アカウント設定」をクリックし、再度表示されるメニューから「アカウント設定」を選択してください。一覧から設定を確認したいアカウントを選択し、「変更」ボタンをクリックします。
  3. 「詳細設定」ボタンを押し、開いたウィンドウの「詳細設定」タブに移動すると、受信サーバーと送信サーバーのポート番号を確認できます。

まとめ

本記事では、メールの送受信に不可欠なポート番号について、その役割や種類、推奨される設定を解説しました。ポート番号はメールサーバーと通信するための大切な窓口であり、プロトコルや暗号化の有無によって使用する番号が異なります。

現在の推奨設定は、メール送信(SMTP)には「587番」、安全なメール受信にはPOPなら「995番」、IMAPなら「993番」です。お使いのメールサービスの設定を一度確認し、もし古い設定のままになっていたら、この機会に安全なポート番号へ変更しましょう。