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2024.11.05 (火)
HowToガイドPostmaster Toolsとは? 設定方法から使い方、迷惑メール率の改善方法などを解説
Last Updated on 2024.11.13
2024年2月にGmailの新しい送信者ガイドラインが適用され、メール送信者に対する要件が強化されました。ガイドラインの要件に準拠できていないと、Gmail宛のメールの到達率が低下する恐れがあります。
そこで注目されているのが、Googleが提供するPostmaster Toolsです。Postmaster Toolsでは、送信者ガイドラインへの適合状況を始め、メール配信に関する各種指標を確認することができます。この記事では、Postmaster Toolsの設定方法から利用上の注意点、確認できる内容の詳細や、問題点を改善するためのポイントについて解説します。
目次
Postmaster Toolsとは
Postmaster Toolsとは、Googleが提供する、メール配信に関わる各種指標や評価を確認できるツールです。Gmail上で自社のドメインから配信されているメールがどのような評価を受けているかを確認できるため、メールの到達率を改善するために役立ちます。
Postmaster Toolsの設定方法
Postmaster Toolsの設定は以下の手順で行います。
1. Postmaster Toolsにアクセスする https://www.gmail.com/postmaster/
2. Googleアカウントでログイン
3. 右下の+アイコンをクリック
4. 確認したいドメインを入力する
5. ドメインの所有権を証明する
発行されたTXTレコードをコピーし、対象ドメインのDNSで設定を行います。完了後、「所有権を証明」をクリックします。
Postmaster Toolsの新・旧ダッシュボード
Postmaster Toolsのダッシュボードには、従来のものと新しいものがあります。新しいダッシュボードは、2024年2月から適用されたGmailの送信者ガイドラインの要件に適合できているか、コンプライアンス ステータスを確認しやすくするために用意されたようです。
Postmaster Toolsにログインすると、トップページは登録されているドメインの一覧となっており、ドメイン名をクリックすると旧ダッシュボードに移動します。
新ダッシュボードには、上部の「より多くのユーザーにサービスを提供するために、コンプライアンス ステータス ダッシュボードを更新しました。」のテキスト内リンクをクリックすると移動できます。
旧ダッシュボード
Postmaster Toolsの旧ダッシュボードでは、迷惑メール率をはじめ、IPレピュテーションやドメインレピュテーションといったメール配信に関わる評価指標を確認することができます。
新ダッシュボード
Postmaster Toolsの新しいダッシュボードでは、Gmailの送信者ガイドラインに適合できているか、コンプライアンスのステータスを一覧することができます。同じくGmailガイドラインの要件となっている「迷惑メール率」も確認することができます。
Postmaster Toolsを使う際の注意点
Postmaster Toolsを使う際は、以下のポイントに注意しましょう。
評価対象は個人用Gmailアカウント宛のメールのみ
Postmaster Toolsはどのドメインでも使用できますが、評価対象となるのはGmail宛に送信されたメールのみです。
一定の送信量が必要
1日あたりのメール送信数が少なすぎる場合、データが表示されないことがあります。また、指標によって対象となるメールが異なるため、一定の送信量があったとしても特定の指標についてはデータが表示されない可能性があります。
指標によって対象となるメールのデータが異なる
GoogleのPostmaster Toolsダッシュボードの解説を確認すると、指標によって評価の対象となるメールが異なることがわかります。指標によって、分析対象のドメインがヘッダFromに設定されているすべてのメールが対象になることもあれば、DKIM認証ができているメールのみに限られるものもあります。
昨今の企業のメール送信環境は複雑化しており、自社のメールサーバー以外にも、外部のクラウドサービスからメール配信をしているケースも多いです。外部のクラウドサービスを利用している場合、SPF認証に使われるエンベロープFromのドメインや、DKIM認証に使われるドメイン(DKIM署名ドメイン)がサービス提供事業者のドメインとなっており、ヘッダFromのドメインと一致していない可能性があることに注意が必要です。
例えば、example.comという企業ドメインをヘッダFromに設定しているメールでも、送信環境によって以下のようにエンベロープFromやDKIM署名ドメインが異なることがあります。
- SPFとDKIMのいずれもヘッダFromのドメインで設定している
- SPFとDKIMのいずれも外部のサービス事業者ドメインになっている
- SPFは外部のサービス事業者ドメインで、DKIM署名はヘッダFromのドメインに設定している
- SPFはヘッダFromのドメインで設定しているが、DKIMを設定していない
外部のクラウドサービスを利用していても、エンベロープFromやDKIM署名をカスタマイズしてヘッダFromのドメインに変更していれば①のパターンとなります。
このように、1つのドメインでも送信環境によって認証の状況やドメインが異なる上に、Postmaster Toolsの指標によって対象となるメールの条件が異なるため、場合によってはほとんど対象となるデータが得られないことも考えられます。それを理解した上で、Postmaster Toolsの評価を確認するようにしましょう。
ヘッダFromとエンベロープFromについて詳しくはこちらの記事で解説しています。
「エンベロープFrom」と「ヘッダFrom」の違いとは? | ベアメールブログ
Postmaster Toolsで確認できること
具体的にPostmaster Toolsでどのような内容が確認できるのか、新・旧ダッシュボードの比較や、各指標の詳細について解説します。
新・旧ダッシュボードの内容比較
Postmaster Toolsは、旧ダッシュボードと新ダッシュボードで確認できる内容が異なります。
新旧の差異を比較表にまとめると以下のようになります。
旧ダッシュボード | 新ダッシュボード |
---|---|
迷惑メール率 | 迷惑メール率 |
IPレピュテーション | コンプライアンスステータス |
ドメインレピュテーション | |
フィードバックループ | |
認証 | |
暗号化 | |
配信エラー |
新ダッシュボードで確認できるのは迷惑メール率とコンプライアンスのステータスのみなので、レピュテーションなどの各種指標を確認したい場合は旧ダッシュボードを見る必要があります。
Postmaster Toolsの各指標の内容
ここではPostmaster Toolsで確認できる指標とその意味について解説します。
各指標の評価対象となるメールについては、Googleの公式ヘルプの記載から推定しています。実際の評価のアルゴリズムについて詳細はわからないため、あくまで参考であるとご理解ください。
参考:Google Workspace 管理者ヘルプ「Postmaster Tools ダッシュボード」https://support.google.com/a/answer/14668346?hl=ja (2024/11/5確認)
迷惑メール率
受信トレイに届いたメールのうち、受信者が迷惑メールとして報告したメールの割合です。Googleが迷惑メールフォルダに自動的に振り分けたメールは、迷惑メール率の計算には含まれません。
迷惑メール率の計算対象となるのは、DKIMで認証されたメールのみと記載されています。
例として以下のような状況であれば、対象となるのは①と③であると考えられます。②についてはDKIMで認証されているものの、DKIM署名に使用しているドメインが異なるため評価の対象になるのかは不明です。
迷惑メール率については新旧ダッシュボードどちらでも確認ができますが、新ダッシュボード上に「データのカバー範囲と可視化が改善された新しいバージョンのスパムダッシュボードがリリースされました」と記載されています。
新ダッシュボードの方が縦軸の刻み幅が0.05%刻みと細かくなっており、送信者ガイドラインの要件である「迷惑メール率を0.3%以下にする」を満たせているか、より直観的に理解しやすくなっています。また、データのカバー範囲も改善されたと書いてあるため、新ダッシュボードの方を確認する方が良いと考えられます。
IPレピュテーション と ドメインレピュテーション
使用しているIPアドレスとドメインの評価です。過去のメールの送信実績からスコアが算出され、悪い・低・中・高で評価されます。レピュテーションが低いと迷惑メールとしてブロックされたり、迷惑メールフォルダに振り分けられる可能性が高まります。
ドメインレピュテーションについては、Googleの公式ヘルプに以下のように記載されています。
- DKIMおよびSPF認証に使用されたドメインから送信されるメールのみが表示される
- ドメインレピュテーション ダッシュボードに反映させるには、DKIM認証とSPF認証の際にドメインを正確に使用する必要性がある
そのため、ドメインレピュテーションの評価対象となるのはヘッダFromのドメインとエンベロープForm・DKIM署名ドメインが一致している①のケースのみになると考えられます。
また、IPレピュテーションとドメインレピュテーションに関するヘルプには、以下のようにも記載されています。
- Postmaster Tools には、DKIM 認証済みメッセージの送信元ドメインと IP アドレスの評価が表示される
- 送信元 IP アドレスが DKIM を使用していない場合、SPF 認証済みメッセージを送信するドメインと IP アドレスの評価が表示される
このことから、IPレピュテーションについてはドメインレピュテーションよりももう少し対象となるメールの範囲が広く、①に加えて③や④のケースもダッシュボードに反映されると考えられます。
②のケースについては、ヘルプの記載が曖昧なためどのような扱いになるのかわかりませんが、少なくともドメインレピュテーションの評価対象にはならないと思われます。
フィードバック ループ
受信者からのクレームが多いメールのデータです。このダッシュボードは、Googleの指定する方式で「Feedback-ID」のヘッダとパラメータを埋め込んだメールを送信している場合のみデータが表示されます。グラフ上のデータポイントをクリックすると、FBLから問題が報告された識別子と迷惑メール率を示す表が表示されます。
Google Workspace 管理者ヘルプ「フィードバックループ」https://support.google.com/a/answer/6254652 (2024/11/5確認)
認証
SPF、DKIM、DMARC認証に成功したメールの割合です。
- SPF 成功率: SPF に正常に認証され、From: ヘッダと一致した認証ドメインからのメールの割合
- DKIM 成功率: DKIM に正常に認証され、From: ヘッダと一致した認証ドメインからのメールの割合
- DMARC 成功率: DMARCが正常に設定されており、SPF または DKIM のいずれかでアライメントに合格した認証ドメインからのメールの割合
認証の成功率の評価対象は、そのドメインがヘッダFromに設定されているメールであると記載があります。そのため、エンベロープFromやDKIM署名ドメインが異なるメールについても評価対象になっていると考えられます。
ただし注意したいのは、Googleが公開している条件によれば、この認証成功率とは単純にSPFやDKIMの認証が合格するだけでなく、ヘッダFromのドメインと一致している必要があるということです。
SPFやDKIMの認証自体が成功していても、②や③のようにヘッダFromと認証ドメインが一致していない場合は失敗とみなされるため注意が必要です。
DMARCのアライメントについて詳しくはこちらをご覧ください。
DMARCのアライメントとは? SPF・DKIMアライメントをPassするためのポイント – ベアメールブログ
暗号化
TLSで暗号化して送信されたメールの割合です。
- 受信でのTLS使用率:そのドメインから受信したメールのうち、TLS接続を使用して送信されGmailで受信されたメールの割合
- 送信でのTLS使用率:そのドメインから送信されたメールのうち、TLS接続を使用してGmailに送信されたメールの割合
「受信」がそのドメインが受信したメール、「送信」がそのドメインから送信されたメールだと考えたくなりますが、実際のデータを見る限り、外部メールサーバーから送信されたメールのTLS使用率については「受信」に反映されるようです。
おそらくGoogle Workspaceなど、Gmail環境からメールを送信しているユーザ視点での「受信」「送信」となっているのではないかと考えられます。
そのため、Google Workspaceからメールを送信しておらず、Gmail環境以外の外部メールサーバーを利用している場合は「受信でのTLS使用率」のみがダッシュボードに表示されるようです。
配信エラー
拒否されたか一時的に失敗したメールの割合です。データポイントをクリックすると、拒否や失敗の理由を示す表が表示されます。
配信エラーの評価対象となるメールは、「すべての認証済みメール(SPFまたはDKIM)」と記載されているため、SPFかDKIMで認証がされている①、③、④のケースは対象になると考えられます。ただしここでも、SPF・DKIMを第三者のドメインで認証している②のケースをGmailがどのように評価するのかは不明です。
コンプライアンスステータス
「メール送信者のガイドライン」の要件への適合状況です。適合できている要件は緑字、適合できていない要件は赤字でステータスが表示されるため、どこに問題があるかを確認できます。具体的な項目は以下の通りです。
- SPF認証とDKIM認証
- From:ヘッダーの適合 ※
- DMARC認証 ※
- 暗号化
- ユーザが報告した迷惑メール率
- DNSレコード
- ワンクリックでの登録解除 ※
- 登録解除に対応する ※
※印があるものについては、1日5,000通以上Gmail宛に配信したことのある一括送信者が対象の項目です。
コンプライアンスステータスの評価対象については、特に記載されていないため不明です。ただし、Gmail送信者ガイドラインへの適合状況を確認するという目的から考えれば、対象ドメインがヘッダFromに設定されているすべてのメールを対象にしているのではないかと考えられます。
また、コンプライアンスステータスには、プライマリドメインのステータスが表示されるとあります。もしPostmaster Toolsにサブドメインを登録しても、確認できるコンプライアンスステータスはサブドメイン単体のものではなく、プライマリドメイン全体のデータとなります。
これはGmail送信者ガイドラインの要件が、そもそもプライマリドメインに対する評価であるためだと考えられます。
参考:Google Workspace 管理者ヘルプ「コンプライアンス ステータス ダッシュボード」https://support.google.com/a/answer/15013575?hl=ja (2024/11/5確認)
Postmaster Toolsで判明した問題点を改善するには?
Postmaster Toolsを使用して問題点が見つかった場合、どのように改善すれば良いのでしょうか。ここでは配信エラー率、レピュテーション、迷惑メール率の改善方法について解説します。
配信エラー率が高い場合
配信エラー率が高い場合は、次のような対策を行いましょう。
バウンスメールや送信ログを確認して、エラーの原因を特定する
エラーを減らすためには、まずは何が原因となっているか特定する必要があります。バウンスメールや、ログに記載されているエラーコードを確認し、エラーの原因に応じた対応を行いましょう。
バウンスメールについて詳しくはこちらの記事で解説しています。
バウンスメールのリスクを解説!具体的な対策も紹介 | ベアメールブログ
メールのエラーコードについてはこちらの記事にまとめておりますのでご参照ください。
メールのエラーコード(SMTPステータスコード)の意味と対策 | ベアメールブログ
ブラックリストに登録されていないか確認する
IPアドレスやドメインがブラックリストに登録されてしまうと、メールの到達率は大幅に低下します。メールの配信エラーが突然急上昇した際には、ブラックリストに登録されていないか確認し、登録されてしまっていた場合は早急に解除申請を行いましょう。
ブラックリストの確認方法についてはこちらで解説しています。
ブラックリスト登録されたメールの確認・解除方法について | ベアメールブログ
DNSの設定に技術的な問題がないか確認する
DNSの各種レコードは、メール配信において送信元の信頼性確認に活用されています。Aレコード、MXレコード、PTRレコードなどの設定に誤りがあると、到達率が低下する恐れがあるため確認が必要です。
DNSの設定について詳しくはこちらをご覧ください。
迷惑メール判定されないために注意したいDNSの設定とは? Part1 | ベアメールブログ
迷惑メール判定されないために注意したいDNSの設定とは? Part2 | ベアメールブログ
IPレピュテーション、ドメインレピュテーションが低い場合
IPレピュテーション、ドメインレピュテーションが低い場合は、次のような対策が効果的です。
送信ドメイン認証(SPF・DKIM・DMARC)を設定する
新しいIPアドレスやドメインを使用する際は、徐々に送信量を増やす(ウォームアップ)
配信リストから無効・無関心な宛先を除外し、到達率・開封率を高める
レピュテーションの概要や、向上させるためのポイントはこちらの記事で詳しく解説しています。
IPレピュテーションとドメインレピュテーションとは? レピュテーション向上のポイントを解説 | ベアメールブログ
迷惑メール率が高い場合
「メール送信者のガイドライン」には、「Postmaster Toolsで報告される迷惑メール率を0.3%未満に維持します」と記載されています。もし上回っている場合は、ガイドラインの違反となってしまうため以下のような対策を行いましょう。
購読解除の方法をわかりやすく記載し、手間がかからないようにする
配信停止の手段が記載されていない、またはその手続きが煩雑な場合、受信者は購読解除手続きを行う代わりにブロックや迷惑メール報告を行う可能性が高まります。
メールマガジン、一斉配信を行う際には必ず配信停止の方法を記載するようにし、できる限り簡便なものにするようにしましょう。Googleが大量配信者に対し義務付けている「ワンクリック登録解除」機能を採用するのも有効です。
ワンクリック登録解除について詳しくはこちら
ワンクリック登録解除とは?Gmailガイドラインへの対応方法 | ベアメールブログ
送信頻度が高い場合は調整する
ベアメールが2023年に行った調査によれば、企業からのメールを配信停止/ブロック/迷惑メール報告する理由として最も多かったのは「同じ企業から頻繁にメールが来すぎる」ことでした。
普段から利用している企業・店舗であっても、望ましい配信頻度は週1回程度という回答が最も多く、関係性が薄くなるにつれ許容度はさらに下がります。
頻度が高すぎる場合はブロック・迷惑メール報告されるリスクが高まるため、受信者との関係性に応じて頻度を調整するのが望ましいでしょう。
読者にとって有益な情報を発信できているかを見直す
ベアメールの同調査において、配信停止/ブロック/迷惑メール報告する理由として次に多かったのは「自分には関係がない情報が送られてくる」でした。
闇雲にメール配信を行っているとそのように感じられるリスクが高まるため、メール配信時にはセグメントを適切に分けるなど、受信者にとって有益な情報発信を心がけるようにしましょう。
日本全国の10〜60代の男女1,200名に対して行ったメール意識調査の結果は、こちらの資料にまとめています。
まとめ
Postmaster Toolsを使用することで、自社のドメインがGmail上でどのような評価を受けているかを確認できます。新ガイドラインにより送信者への要件は厳しくなったため、Postmaster Toolsを活用して問題点がどこにあるのかを確認し、改善に取り組むことが重要です。